《めてみみ》米中貿易摩擦のゆくえ

2019/07/03 06:24 更新


 米国は対中制裁関税第4弾の発動を先送りした。当面は最悪のシナリオを回避できた。日系の繊維関連企業は直接の影響は少ないものの、消費者心理がさらに冷え込み中国国内の消費減速を懸念する声が多い。素材メーカー、商社の多くは売上高の拡大のため中国内販向けの販売を強化している。

 第3弾で対象品目となった繊維素材の対米輸出は、19年第1四半期に前年実績を割り込み、影響が明らかになった。中国国内のコスト上昇により生産基盤が東南アジアへ移転している。日本の輸入統計を見てもベトナムからの衣類輸入の拡大が続いている。

 東南アジアへの生産移転が、米中貿易摩擦により、さらに加速するのか。中国の衣類輸出はEU(欧州連合)、米国、日本の順となっている。繊維輸出という枠組みでみるとベトナムへの輸出は年率20%で伸び、この勢いが続くと19年の輸出総額は、日本への輸出総額と、ほぼ同じ水準になる。

 中国大手素材メーカーはベトナムでの生産拠点を整備している。これを加速する動きが出てくるかもしれない。ベトナムでの報道によれば、中国による迂回(うかい)輸出を心配する声も出始めている。米中貿易摩擦による急激な生産地の移転は、衣類生産の大部分を海外に依存している日本にとっても何らかの影響は出そう。今後の動きを注視する必要がある。



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