あるメンズのセレクトショップは、トレンドに関係なくアメカジの服を品揃えの一角として作り続けている。来秋冬の展示会でもオーセンティックなチノパンやボタンダウンシャツが並んでいた。
作る量は多くない。当然米国生産などはできず、小ロット生産に応じる日本の工場で作っていた。だが、輸入浸透率が95%を超えた10年ほど前からそれも難しくなり、ここ数年はアジアを活用している。
工場を国内からアジアに変更した際、「アメカジっぽいディテールを再現して欲しいという意図がうまく伝わらず、仕上がりがどうしてもこちらのイメージと違って困った」ことがあったそうだ。
何シーズンか取引して、ようやく狙い通りの「顔」に仕上がるようになってきた。苦労を重ねてきた分「最近、ユニクロのすごさを改めて感じる」とその店のディレクターは話す。「工場のレベルが高く、作る商品は値段からは考えられない出来栄え」と舌を巻く。
ユニクロを作る工場に自分たちも発注してみようと考えたこともあったらしいが、「生産ロットが違いすぎて相手にもしてもらえない」。その店のアメカジ商品の価格帯は1万~3万円。価格の手頃さで「ユニクロでいい」と言われた時代はとっくに終わり、もはやベーシックなカジュアルは「ユニクロの方がいい」時代なのかもしれない。