《めてみみ》出町柳の人の流れ

2019/06/05 06:24 更新


 京都市街の東北、鴨川と高野川が合流する一帯が出町柳。川の西側には、昔の雰囲気が漂う商店街が残っている。一角に豆餅(豆大福)で知られる和菓子屋、出町ふたばがある。本店以外では、ごく限られた場所や時間でしか売っていない。賞味期限も当日限り。週末ともなると、店の前の行列が絶えない。

 出町柳からは、下賀茂神社や御所なども徒歩圏内にあり、インバウンド(訪日外国人)も増えてきた。ふたばの行列にも欧米、台湾や韓国などからの観光客が交じる。ガイドブックやスマートフォンの画面を見ながら、豆餅の目的買いと思われる姿もある。国境を越えて情報が共有される時代を改めて感じる。

 ふたばから程近い鴨川にかかる橋のたもとには、鯖(さば)街道口の石碑が立つ。かつては、日本海側の若狭で獲れた鯖を、ほぼ一昼夜かけ京都まで歩いて運んだ。距離にして70キロ以上あるだろうか。不便な時代だと思いきや、実は一昼夜という時間が、塩で締めた鯖を良い味加減にするのだという。

 京都を訪れる外国人観光客はさらに増える。今は関西空港や新大阪経由で来る人が大半だが、いずれは日本海側の港に大型客船が着き、昔の鯖街道沿いに観光バスが続々と京都に入って来る時代が来るのかも。人と物の流れがどう変わっていくのか。インバウンドビジネスには今後も注意が要る。



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