大学進学のため記者が上京した30年前は東京への憧れが強かった。就職しても地元に戻るつもりはなかった。だが、今の学生は東京だけに就職先を求めているわけではない。規模の大小は関係なく、個性的なローカル企業に魅力を感じる若い世代が増えつつある。
先日、繊研新聞社が開催した就職準備イベント「センケンjobフェス」では、大手企業に混じって東北の縫製工場とニッターがブースを出し、両社によるミニセミナーにも真剣に耳を傾ける学生の姿が目立った。地方での暮らし方やアットホームな社風、ベテラン職人による技術指導など服作りのやりがい、大切さをアピールした。
両社に限らず、ここ数年で、県外(東京を含む)から新入社員を採用したという地方の工場の話をよく聞く。背景には物作りにやりがいを見いだす若い世代が増えている半面、実践的に服作りの技術を習得できる場が少ないことがある。アパレルメーカーが生産工程を外部に丸投げし、物作りの機能が空洞化していることも大きい。
逆に、地方の有力工場はファクトリーブランドを立ち上げ、マーケットで存在感を示し始めた。それに伴い、作る機能はもちろん、企画、デザイン、営業、販売、販促などの役割も必要になっている。これから若い世代が活躍できる場はローカルにあるのかもしれない。