ある専門店は、朝礼の後、早番の店員全員で円陣を組み、いっせいに声を出してから店を開ける。チームスポーツの試合前のルーティンのようだが、そこの店長によると、確かな理由があるという。
赴任した当時、店は売り上げも芳しくなく、それが原因でスタッフに元気がなかった。そこで、せめて気分だけでも上げていこうと思い立ち、店独自の習慣として始めた。最初は「恥ずかしさもあって、声も小さかった」。
店長は気乗りしないスタッフにかまわず、自分から率先してルーティンを続けた。毎日やるうち、皆も慣れてきて、声は大きく、施設内の他の店にも聞こえるほどになった。気持ちを半ば強制的に切り替える効果から、「お客さんの少ない午前中からスタッフはきびきび動くようになった」。
メンズ、レディスの総合店でスタッフは男女混合編成だが、テンションを一緒に上げて働き始めるようになってから、性別に関係なく、自然なコミュニケーションがスタッフ間で取れるようになった。
すると来店客数が増え、接客のチャンスが増えた分、売り上げも上がるようになった。結果が出始めると、スタッフはさらに能動的に動くようになった。今では、声出しをスタッフがローテーションでやっている。日々の小さな努力の積み重ねが、売れる店に特有の活気を生み出す。