《めてみみ》イチョウの防風

2017/11/27 04:00 更新


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 愛知県祖父江のイチョウが見ごろを迎えている。町内には1万本を超えるイチョウがあり、中には樹齢100年以上の古木もある。町中が見事な黄色に染まり、黄葉目当ての観光客に農家は庭先で大粒の銀杏を販売する。

 イチョウは燃えにくく、大木に育って風を遮ることから、防火、防風のために屋敷回りに植えられてきたという。祖父江から尾州一帯は冬、伊吹山から吹きおろす冷たい強風の直撃を受ける。伊吹おろしから家を守るための備えだ。 

 マクロの経済指標は好況を指しているものの、家計は厳しく、個人消費は一向に上向かない。例年より早い寒波の訪れで防寒物が動いているが、アパレル需要全体を押し上げるまでの力強さはまだない。消費税率が8%に引き上げられた14年4月以降、アパレル消費は鍋底をはうような厳しい状態のままだ。アパレル業界はそれ以来、強風にさらされている。

 17年4月から19年10月に再延長された10%への消費増税の実施が、あと2年足らずに迫ってきた。消費の回復が見られない中で増税が実施されれば、逆風はさらに強まり、強風は暴風に変わる。

 暴風を和らげるために新しい木を植え、枝葉を茂らせるか、今の木の幹をさらに太くして暴風に耐えられる強いものにするか。防風林を育てるほどの時間はないが、備える時間は残されている。



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