日本人にとってタイは東南アジアで最も人気の旅行先で、16年に同国を訪れた日本人は過去2番目に多い144万人だった。親日的で比較的治安も良く、アジアらしい雑踏や南国の風情が味わえるのも魅力かもしれない。最近はタイから日本を訪れる旅行者も急増している。
タイとは経済面の結びつきも深く、日系企業1700社以上が進出している。在留邦人は7万人で、大正期にルーツを持つバンコク日本人学校は児童数が2200人と上海を上回って世界最大だ。
両国は今、共通する問題を抱えている。それは経済の停滞だ。タイは新興国の追い上げを受けて輸出産業が競争力を失い、技術力では先進国とも開きがある。このため、成長が鈍化する〝中進国のわな〟と呼ばれる現象に陥っていると指摘される。一方、日本は景気拡大の期間が「いざなぎ景気」を超えたと言われるものの、デフレ基調が続いており、実感に乏しい。名目GDP(国内総生産)は20年間ほぼ横ばいで、先進国では異例の低成長である。
少子高齢化という社会構造も共通する。経済の発展段階や課題の中身は両国で異なるが、産業を高度化し、省人化や効率化によるビジネスモデルの変革が必要なのだろう。今年は日本とタイが修好宣言を調印した1887年(明治20年)から130周年にあたる。互いに正念場である。