《めてみみ》足を満たす

2017/11/20 04:00 更新


 片側2車線の一般道を走行中、先行する自動車がクラクションを鳴らしながら左側車線によけている。すぐ前の車が左の車線に寄せると、目の前に対向車が現れた。中央分離帯に気付かず、反対車線に入り込んでしまったのだろう。運転席にいたのはやや年配の男性だ。それほどスピードを出していなかったので避けられたが、高速道路なら大事故になっていたかもしれない。

 逆走に限らず、運転ミスや判断ミスによる高齢者の事故が大きく取り上げられ、自分の運転に不安を感じるようになった高齢者は多い。昨年、65歳以上で免許を返納した人は前年よりも20%以上多い32万7000人。

 自分で車を運転できなくなると困るのが買い物。自治体によっては自主返納すると、バスや鉄道の回数券やタクシーの割引券を渡しているが、昨日まで車で好きな時間に買い物に行っていたのに、時刻表に合わせて行動しなければならないとなると不満もたまる。

 百貨店や商業施設では、自宅への配送を無料にしたり、一定額を割り引いたり、返納者へのサービスを始めている。ただし、荷物は運んでもらえるが、自分の体は自分の足で運ばなければならない。自然と外出がおっくうになり、買い物に行かなくなる。車を運転できなくなった高齢者の足をどうやって満たすか。顧客満足の重要なテーマになった。



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