古民家や町屋を活用した事業が目立ってきた。JR西日本がベンチャー企業と組んだ古民家活用、ワコールホールディングスの町屋や古民家を活用した宿泊事業などだ。こうした事業を軌道に乗せるには好物件の確保が前提になる。企業間で情報が入る時もあれば、消費者が代表電話に問い合わせることも多いらしい。
時に怪しい物件や崩壊寸前の家もあるそうだが、まず現地に足を運んで物件を確認するのが基本動作。「自分が全く知らなかった世界が分かって、面白いですよ」とある担当者。京都の民家を訪れた時のことだ。間口は極小なのに、とてつもなく奥行きが長く、路地の突き当たりには驚くような豪邸が建っていたという。
特に京都は、「鰻(うなぎ)の寝床」と呼ばれるこうした間取りの家が今も数多く残る。豊臣秀吉が京都を治めていた時、三間(約5・4メートル)の間口を一つの家として課税した。これに対抗した町民たちが節税効果を狙って間口の狭い家を作ったとの説が有力だ。
これから海外の企業や個人が古民家を買い取るケースも増えてくるだろう。資本力では対抗しにくいのが現実だが、古き良きものを大事に守っていくためにも日本企業の奮闘に期待したい。長年の住み家に愛着のある売り主も多いはず。「あの会社なら任せても安心」という企業の信用力が問われてくる。