大手百貨店は不動産事業に本腰を入れる。都心の好立地の保有不動産の再開発や、外部企業と連携した商業不動産事業が相次いでいる。背景には本業である百貨店の不振がある。新たな収益源を確立し、経営の安定化で企業としての持続性を確保する狙いだ。
J・フロントリテイリングは連結営業利益に占める不動産事業の比率を5年間で12%に引き上げる。4月に開業した「ギンザ・シックス」や今秋の上野再開発などが柱。大丸松坂屋百貨店は昨年7月に不動産事業部を設立、大丸心斎橋店の本館建て替えや京都、名古屋、上野など店舗周辺エリアで賃貸事業に着手する。
高島屋は子会社の東神開発をはじめとした不動産事業で、営業利益が約100億円に達し、百貨店と同水準の利益を稼ぐ。日本橋店の隣接街区に建設している新館は18年秋に開業を予定し、本館の百貨店と新館の専門店による新たな都市型SCを目指す。
不動産事業は収益への貢献だけでなく、百貨店の構造改革に生かしていく考えだ。百貨店の区画を、従来の仕入れから定借へ転換することで運営コストを圧縮し、利益改善に結びつける。コスト削減にとどまらず、生き残りをかけた業態転換などを加速する。もっとも、不動産事業を軌道に乗せるのは簡単でない。顧客、市場の変化に対応できなければ、館の価値は瞬く間に陳腐化する。