新潟県上越市にある春日山城は、上杉謙信の居城として名高い。石垣などは無いが、尾根を巧みに活用し、堀や土塁を組み合わせた趣ある城である。標高180メートルの本丸跡に登ると、頚城平野から日本海、関東平野に至る山々が一望に見渡せる。
今でこそ、米どころで有名だが、かつてこの一帯は青苧(あおそ)畑が一面に広がっていたらしい。青苧はイラクサ科の多年草木。丈夫な繊維が取れ、高級織物として武士の裃(かみしも)などに使われた。特にこの地の織物は越後上布として全国に名をはせた。謙信の度重なる出兵を資金面で支えたのは越後上布だったとの説もある。
江戸時代になり、木綿が普及すると共に、青苧は衰退していく。現在の直江津市中心に、往時は人口6万人、日本屈指の大都市だったという同地も、青苧の消滅と合わせるよう静かな農村に変わっていった。
近年、一部の地域で青苧復活の動きが出てきたことは喜ばしい。経済性や効率よりも、地域の歴史や文化を見直そうという流れは少しずつ進んでいる。繊維業界にも多くの産地があるが、現状は住民を巻き込んだような地域産品作りには至っていない。戦国、江戸時代と多くの藩が独自の文化を育んだ国。この多様性が外国人観光客を引きつける。日本人が思っている以上に、貴重な地域の財産をもっと活用していきたいものだ。