フィジカルの復活に伴い世界各国からデザイナーがカムバック、パリ・メンズコレクション中の街にはショールームが軒を連ねた。展示会は久しぶりにパリを訪れたバイヤーたちとの再会の場ともなった。中には渡航解禁をうけ、早速来仏した中国本土のバイヤーの姿も目立った。
(ライター・益井祐)
ドーバーストリートマーケット・パリショールームで最注目だったのは、ステファノ・ピラーティによる「ランダム・アイデンティティーズ」だった。本格的な再始動となる23年秋冬は、ジャケットやパンツといった美しいテーラーリングから、ダウンジャケット、ホモエロティックなプリントのシャツやTシャツ、靴下やジュエリーまでフルコレクションが並んだ。
同ショールームがある複合スペース3537で初のキャットウォークショーを行ったのは「アイレイ」。ショーで目立っていた毛むくじゃらのジャケットやシャツは、実は人毛だった。昨今の研究で人毛に油を吸う性質があることが分かり、原油流出などの対応策に使う素材としてヘアサロンからチャリティーへ寄付されたものを、提供してもらったという。さすがに製品には適しておらずショーサンプルのみだが、糸で代用したものもある。