新型コロナウイルスの感染拡大で、生活必需品となったマスク。様々な企業が生産に乗り出すなか、日本のテキスタイルやニットの産地企業が手掛ける布マスクが注目されている。高機能で着け心地がよく、デザイン性も評価されている。生地に特化して培ってきた技術やノウハウを生かしており、産地の特色が見えてくる。
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日本の繊維産地は、海外品との競合や衣料消費の低迷、職人の高齢化など厳しい環境に耐え続け、新型コロナウイルスで存続の危機に直面している。マスクの生産は社会貢献の意味合いが強いが、命脈を保つための選択でもある。
これまであまり表に出てこなかった企業もマスクの販売を機に、ECやクラウドファンディング、SNS、メディアなどを使い、素材の特徴や生産背景、思いを発信している。生産者の顔を見て、手頃な価格で日本の生地の魅力に触れるチャンスだ。今回は布マスクを通し、四つの産地を探訪する。
◇様々な素材や技術を巧みにミックス
桐生産地(群馬)
桐生産地のマスクは、特に個性豊かだ。産地内でマスクを生産・販売する事業者をまとめた桐生商工会議所のウェブページには、30社もの情報が掲載されている。使う素材も生地の作り方も様々。桐生産地は、複雑な織り柄ができるジャカード織りを中心に、天然繊維から化合繊まで様々な素材を扱い、巧みに複合できる強みがある。