《販売最前線》レディスシューズの「マナ」 デザイナーのライブ配信で客層拡大 着こなし術が購買に結びつく
足元からおしゃれの楽しさ伝えます――。コンコルディアのドゥ・ラマーレ事業部が、レディスシューズ「マナ」で一昨年から着々と売り上げを伸ばしている。
その要因は、デザイナーの今西優子さんが「インスタグラム」で発信しているコンテンツとライブ配信。デザイン性の高い靴やスニーカーを今っぽくこなすコツを身近に伝え、若い世代も引き込んでいる。
(須田渉美)
〝映え〟より分かりやすさ
「視聴していると(デザイナーの)素性が分かってきて安心できるんでしょうね。会話もできますし、ダイレクトにコメントが来るのは大きな強み」と今西さん。18年夏に「マナ」(アカウントはMANAcraftshoes)でインスタグラムへの投稿を始め、ライブ配信は同年10月から。そのころ「洋服のブランドがライブ配信しているのを知って、靴はまだないなと。慣れないけれどチャレンジしてみよう」と、自らの企画、社内制作でスタートした。以降、毎週水曜日、20時からの配信を続けている。

マナのフォロワー数は今、6000弱で、ライブ配信の視聴者数は60~100人。その多くが、東京の世田谷区、渋谷区、大阪市、名古屋市、横浜市など都市部の在住者だ。年齢層は、今までほとんど購入のなかった18~24歳が上位に入る変化も出てきている。インスタグラムを始めてから、伊勢丹新宿本店のインショップの売り上げは伸び続け、自社ECの売り上げはライブを始める前の1.5倍となった。数字を落とさず、売り上げに結びつけるコツは「インスタ映え」ではなく、分かりやすさだという。
ライブ配信は、10分以内ならインスタグラムに動画として残しておくことができるので、10分間の収録を心がけ、「1度に紹介する商品は1モデル」と決めている。限られた時間で「いろいろ見せてしまうと記憶に残せないし、視聴者も混乱しやすい」からだ。
今西さんは毎回、販売するモデルを決めてトークのシナリオを考えるものの、「台本は作りません。ドキドキしながら話す方が、見てる側には面白いかなと思って」。

背中を押す一言
一番の成功事例は、19年7月に販売したダッドシューズ。旬のアイテムとはいっても、マナの主力層である30~40代の大人の女性にはなじみがなく、普段着への合わせ方がイメージしにくい。商品を発売する前のライブ配信では「洋服までスポーティーにしないで、フェミニンな印象にしたいなら、ふわふわっとしたロングワンピがオススメ」「ソールにボリュームがある分、脚長効果があるんです!。とはいえカジュアルすぎる着こなしだと、子供っぽく見えてしまうからコツがいる」など手ほどきしながら、配色などのデザインポイントを説明した。

新しいスタイルに興味を持っている消費者が必要とするのは、「こうすれば無理なく楽しめるんですよ」と背中を押す一言だ。結果、1万8000円のダッドシューズは入荷と同時に完売。3回も追加生産するヒット商品となった。
ライブ配信に連動し、インスタグラムの投稿もファッション雑誌風の読み物へと工夫を凝らす。靴そのものに限らず、「スニーカーを履く日のモテメイク」「洋ナシ・りんご・バナナ体型別の着やせ術」など、自分磨きに前向きな女性が関心を持つ話題を取り上げる。その際、掲載するのは写真ではなく、今西さんが描くイラストのスタイリング提案。足元には、マナの靴をさり気なく履かせている。


「洋服もメイクもどこかで靴につながってるんです。日々のちょっとした悩みを解決できる情報誌になろうと、独自のファッションコンテンツを考えています」
(繊研新聞本紙20年1月10日付)