どう作るどう守る③技術

2015/09/21 06:02 更新


独自の創意工夫で強みを発揮

技術者の力

 「このテキスタイルはカタログデータ以上のものです」。織機メーカーの担当者が驚くほどの生地を産地企業は作っている。購入した機械に改造を加えるのは、日本ではよくあることだ。「モンクレール」に織物を供給するメーカーの社長は「うちより高密度の織物を作る企業はあるが、縫い目から羽毛が出ないのはうちの生地だけと言われている」と話す。他社にはまねできない独自の創意工夫を強みにする企業が日本には多い。

 日本と中国で品質の差が小さくなってきたとの指摘もある。中国の企業は資本力があるため最新鋭機を導入している。これに対して日本は一時代、あるいはさらに古い機械を使っている場合がほとんど。大雑把な言い方をすれば中国は機械の力、日本は技術者の力で素材を作っている。モンクレールに生地を販売している企業が典型例だ。

 青文テキスタイルと東亜ニットにある両面選針丸編機は日本に数台しかない特殊機で、裏表別組織のジャージーを作れる。この特殊機を使いこなすには、機械を熟知して工夫できる技術者が不可欠。難しい機械を自由自在に扱い、特徴のある生地を作れるのも日本らしい点だ。一方で消えてしまう技術もある。昔ながらの特殊な技術を用いた素材を、外部に委託する機屋は多い。委託される側は家族経営が一般的。高齢化などの理由で廃業してしまうと、その技術が途絶える可能性は高い。

 日本製テキスタイルの要である染色・加工でも技術開発と挑戦が進んでいる。久山染工は手捺染と後加工を併用した独創性の高い素材を開発した。賃加工商売からの脱却を目指したもので、この10年間でデザイナーやアパレルメーカーと直接取引する流れを作ってきた。手捺染の大本染工、京美染色は昔ながらの技術と最新技術の融合に成功した。手捺染の職人の減少やコスト高で受注が減少する中で、いち早くインクジェットを導入した。速さや効率、コストを競うのではなく、手捺染とも連動した表現力の高さと小ロット対応の仕組みが中小アパレルやデザイナーから支持されている。

設備投資が活発な高島産地の産地展「ビワタカシマ」は、多くの人で賑わった
設備投資が活発な高島産地の産地展「ビワタカシマ」は、多くの人で賑わった

 

補助金の活用

 高島産地では、物作り補助金を活用した設備投資を13年度だけでも、機屋5社が行った。杉岡織布は、最大8色の緯糸が使えるエアジェット織機を導入。グラデーションやボーダーなど意匠性を高めた素材で用途拡大を目指す。本庄織布や木村織物はドビー織機を入れたほか、坂尾織物は番手差のある織物を開発するなど、新しい風合いの高島ちぢみの開発を進めている。

 岐阜県の浅野撚糸は、特許を取得した糸「スーパーゼロ425」を使ったタオルの販売を本格化した。撚りをかけた糸に水溶性ののりでコーティングし、かかっている撚りとは逆方向に2倍の撚りをかけた後にのりだけを溶かすことで繊維の中に空気の層を作った特殊な糸だ。

(繊研 2015/06/10 日付 19255 号 1 面)

【1】どう作るどう守る①単位の違い 【2】どう作るどう守る②連携

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