ザ・ライクラ・カンパニー(米デラウエア州、以下ライクラ社)が開発した吸汗速乾パフォーマンス素材COOLMAX®エコメイドは100%使用済みペットボトル資源から作られた注目のエコ素材だ。2021SSで有力ブランドに採用され、22SSに向けても広がりを見せている。サステイナビリティーはこれからのファッションビジネスに欠かせない。消費者は企業や製品開発の姿勢を注視している。
ライクラ社のCOOLMAX®エコメイドは企業のサステイナビリティーを高め、そしてブランド価値を高める素材だ。廃棄されるペットボトルを樹脂化し、紡績まで6段階の工程を経て、100%PET繊維(ポリエステル)に再生した。従来のバージンPETを使用したものと比較して、「86%以上のエネルギー節約と77%以上のCO2削減に貢献する」(同社独自調べ)という。国際的なGRS(グローバル・リサイクルド・スタンダード)に認定されている。
COOLMAX®は夏の定番素材として1986年に発表。世界のファッション市場で定着してきた。常にイノベーションとアップデートにチャレンジし、今、ファッション業界が最も求めているサステイナビリティー素材としてCOOLMAX®エコメイドを開発した。
日本でも多くのファッションブランドが採用している。COOLMAX®エコメイドとオーガニックコットンと混紡で肌触りの良い、ナチュラルな風合いの商品も登場した。サステイナビリティーへの関心は年々、高まっている。ファッションを通して社会に貢献する。そこにこそ消費者のニーズがある。
コットンタッチの心地よい風合いが素材の高級感を高める
ラコステジャパン
ラコステの21年SSはポロシャツが好調で、「ラコステライブのマルチボーダーものや、シューズのT-POINTなど、ユニセックスで展開されるアイテムも男女の相乗効果で動きが良かった」という。COOLMAX®エコメイドとコットンの混紡を使用した。吸水速乾性と通気性に優れた素材で、コットンタッチのナチュラルな風合いが多くのユーザーの支持を得た。
ラコステは、フランスのテニスプレイヤー、ルネ・ラコステが1933年に設立したブランドで、トレードマークのワニは長く日本のユーザーに親しまれてきた。現在はメンズ、ウィメンズなどトータルシルエットを揃える。
22年SSはスポーツ×カジュアルのテイスト打ち出す一方で、「生地、部材のエコ化を進めていく」としている。人、地域社会、地球環境に貢献する「Durable elegance(持続可能なエレガンス)」という独自の指針を設けており、20年12月には循環経済を促進するエレン・マッカーサー財団(本部イギリス)の「Make Fashion Circular(循環型ファッションビジネス)イニシアチブ」に加入した。消費者のエコに対する関心が高まっていく中で、「COOLMAX®エコメイドの認知度は高く、購買決定のポイントになる」としている。
ラコステの「鹿の子編みのポロシャツ」を別注
ユナイテッドアローズ
ユナイテッドアローズは21年SSではCOOLMAX®エコメイドを素材にしたポロシャツを別注した。「ブランドを象徴する鹿の子編みのポロシャツ。上品で、着心地の良さを追求する」をコンセプトに、コットンとの混紡糸を使用し、ファッション性と機能面で妥協のないアイテムに仕上げた。「いつも以上の仕上がりと着心地面で多くのお客様にお買い上げいただいた」という。
同社はサステイナビリティーを「極めて重要な経営課題」と位置づけている。環境に配慮した素材を使用したモノづくりも積極的に進めており、COOLMAX®エコメイドの採用は「機能面のほか、エコロジカルな視点でもリサイクル素材であるという点」も大きかった。「サステイナビリティーの観点でも商品の背景をお客様に伝えていきたい」という。
夏の素材には吸湿速乾、涼感などさまざまな機能が求められる。しかし、商品の価値は機能だけではない。商品の背景やブランドの取り組みが購買価値を上げていく。22年SSに向けて同社は、「涼感機能と環境に配慮したリサイクル素材。その両面を持ち合わせた素材を採用していきたい」としている。
COOLMAX®エコメイドの品番拡大を予定
ナナミカ THE NORTH FACE PURPLE LABEL
ナナミカは「《ONE OCEAN, ALL LANDS》-海は一つで世界はつながっている-」を合言葉に、「人と環境にやさしい商品の開発」を目指している。
同社がプロデュースする「ザ・ノース・フェイス パープルレーベル」は、機能性や汎用性を追求する一方で、「リサイクルされた繊維や環境負荷を最小限に抑えた素材の選定はブランドの姿勢として検討していく」とする。COOLMAX®エコメイドは機能面と環境配慮の両方をカバーするバランスの良い素材として定番のシャツアイテムなどに採用している。経糸にオーガニックコットン、緯糸にコットンとCOOLMAX®エコメイドの混紡糸を使用したオックス生地は、定番素材をアップデートしたオリジナルファブリックだ。
22SSはCOOLMAX®エコメイドを使用する品番を拡げて、Tシャツなどカットソーにも採用する予定だ。今後も環境配慮型素材へのアップデートを積極的に進め「コットンなどの天然素材と掛け合わせることで、機能性と快適な着心地のバランスを取りながら、自然環境へ配慮したハイブリッドなモノづくりに今後も取り組んでいく」としている。
◆各社のホームページはこちらから
ナナミカ THE NORTH FACE PURPLE LABEL
(企画・制作/繊研新聞社 業務局)