21年LVMHヤングファッションデザイナープライズのセミファイナリスト20人が発表された。日本からは1月にパリ・メンズコレクションの公式日程にデビュしたばかりの「ターク」(森川拓野)と、ドーバーストリートマーケットなどで扱われている〝気になる〟ブランド「ミドリカワ」(緑川卓)が選ばれた。
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「イッセイミヤケ」でデザインと素材への理解を深めた森川は、13年にタークを設立、テキスタイル作りに定評がある。ミドリカワはデザイナーの本名と文化服装学園出身、前職が「アンユーズド」だとしかわかっていない謎の多いブランドだ。
また、世界の最注目株も名を連ねた。ロンドンの新人デザイナー登竜門といえるファッションイーストの一人に現在選ばれているアルバニア出身の「ネンシ・ドジョカ」(ネンシ・ドジョカ)や、昨年ブランドを立ち上げたばかりも関わらず「ロシャス」のクリエーティブダイレクターに就任が決定した「シャルル・ドゥ・ヴィルモラン」(シャルル・ドゥ・ヴィルモラン)の名も。
ダイバーシティー(人材の多様性)やブラックライブズマター運動を反映して、黒人やアフリカからの選出も多かった。「サウル・ナッシュ」(サウル・ナッシュ)は自身がダンサーでコンテンポラリーダンスで衣服の動きを表現するイギリス人デザイナー。ナイジェリアを拠点にする「ラゴス・スペース・プログラム」のアデジュ・トンプソンは、ゲイに対して風当たりの厳しいアフリカにありながら自身がクィア(同性愛者)であることを公言、ジェンダーレスかつサステイナブル(持続可能)な服作りをしている。
アジアで最も勢いのある中国からは、カラフルな素材のコンビネーションで知られるアントワープ王立アカデミー出身の「シューティン・キュウ」(シューティン・キュウ)と、ボディーコンシャスなニットウェアが若者に人気のパーソンズ卒「ルイ」(ルイ・ゾゥ)が選ばれた。
今回の変わり種はアメリカからエントリーした「キッドスーパー」(コルム・ディレイン)かもしれない。ストリート寄りのブランドでプライスポイントも低め。コレクションだけでなく、その自由な発想力はパリ・メンズコレクションで発表された映像にも落とし込まれおり、デジタルでの取り組みも入選の理由の一つだったかもしれない。サステイナブルやダイバーシティー、そしてデジタル、今の風潮を総合的にとらえたセレククションとなった。恒例となっているパリのLVMH社屋での展示会はなく、4月6~11日にかけてデジタルショールームが開かれる。
(ライター・益井祐)