ローカルでいこう&ファクトリー5

2015/10/13 11:35 更新


地元で働き暮らす人を発掘


 富山で働き暮らす人にスポットを当てた地域ブランド「タテヤマワウ」は今夏、地元のイオンモールとなみにショップを開いた。同ブランドを立ち上げた第一編物グループ社長の小田浩史は「自社だけではここまで来られなかった。販路開拓やデザインのプロとプロジェクトを組めたことが大きい」と振り返る。


衣食住全て表現

 同ブランドは2年前にスタート、1年間は地域の暮らし、自然や文化のリサーチに費やし、ご当地のヒーロー・ヒロインの発掘に力を入れた。今年から立山の山岳ガイド、農協の女子職員、温泉旅館の3姉妹女将と、富山の暮らしを象徴する人物と一緒にシーン別の商品を開発した。小田は「次は海のシーン。将来は地元の企業と協業し、衣食住全てで富山を表現したい」と意気込む。秋に大手鉄道キャンペーンで清掃員のユニフォームを提供する予定。3姉妹女将と開発した合繊ジャージーのきものを旅館業界の見本市に出展、全国への認知度向上を進める。

 クリエーションを担うデザイナーの畠山巧は「第一編物の本業は合繊編物の染色・加工。その得意技を地元の再発見という従来と違う角度からブランド化することで新たな価値を生み出せる。ただ、素材開発は問題ないが、縫製は課題が残る」と指摘する。直営店での販売を除くとチームオーダーを基本に考えているため、小ロットと不安定な受注が工場には重荷になる。


現場の人材育成

 来春に向け、インターネット上でタテヤマワウのチームオーダーの受注ができる自社サイトを立ち上げる。初めは量が少ないことも予想される。小田は覚悟を決め、自社で縫製チームを設立することにした。チームは地元の経験者や服飾専門学校卒の若手など5人。縫製だけでなく、ショップスタッフや本業の工場などマルチに活躍してもらえる人材に育てる。

 販路開拓や用途開発などを支援する元百貨店マーチャンダイザーで中小企業基盤整備機構のプロジェクトマネジャー、山本聖は「ノウハウとネットワークの移転によって現場の人材が育つことが大事。その点でも地域ブランドの成長プロセスのモデルケースになりうる」と話す。

 将来的な海外販路の開拓を目指し、第一編物グループでは中国人の若手2人を採用した。ローカル発のブランドが世界の各地で暮らす人たちと思いを共有できる日はそんなに遠くない。(敬称略)=おわり

(繊研 2015/09/11 日付 19318 号 1 面)

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