ローカルでいこう&ファクトリー2

2015/10/11 10:43 更新


“他流試合”で企画力磨く


拡大主義に逆行

 大分のテントメーカーが新事業として、オリジナルの帆布バッグを販売して5年。全国の百貨店の催事でのオーダー受注会が好評で、工房はフル稼働状態が続く。自社でバッグを作る職人が3人しかいないため、量産はできない。立ち上がりから、東京・恵比寿のメンズショップ「Pt・アルフレッド」のオーナー、本江浩二がプロデューサーを務める。「市場に帆布バッグはあふれる状況で、拡大主義は同質化を招くだけ。逆行すべき」と主張する。

 ファクトリーブランドというと、中間流通を省くことで通常よりも価格設定を下げられ、粗利益率も高いのが大きなメリットと思われがち。だが、それだけが魅力ではない。そもそも、一般消費者にアピールしたいなら、ファッションで付加価値をつけ、生活に彩りを与えるものを開発しなければならない。工場の作り手発想だけでは限界がある。クリエーションや販路開拓、接客などプロの〝仕事人〟と組まないと宝の持ち腐れになりかねない。

 帆布バッグは通常、素材に6号を使うことが多いが、同社では極厚の2号を使い、テント用の専用ミシンで縫製することが強み。シンプルな原型に色やディテールをオーダーできるのが受け、地元の百貨店でコツコツ受注会を続けてきた。今年春、本江の店でオーダー受注会をする際、「洋服屋がカスタマイズするなら、普通じゃつまらない」との思いから、着脱できるバッグや収納ケースをポケット代わりにしたエプロンを企画した。

高い技術を共存

 既存と全く異なる発想で帆布を活用することで新しい価値が生まれる。そのためには、「〝他流試合〟のように異業種との協業で企画力を磨き続ける地道なブランディングが有効」と本江はみている。自転車や家具、スニーカーなどとの取り組みも予定する。高い技術があっても、狭く小さい市場を深耕するだけでは先が見えてしまうからだ。本江は「小規模でも強みを持った作り手同士が、地域や業種を超えて共存する力も鍛えられる」と話す。そんなアドバイスの下、佐藤防水店の若手担当者は全国を駆け回る。(敬称略)

(繊研 2015/09/08 日付 19315 号 1 面)

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