ロンドン・ファッションウィーク・セプテンバー2022 ジェンダーフルイドを投影

2022/09/22 06:27 更新


 23年春夏ロンドン・コレクションは、性差の意識がますますあいまいになっている。メンズとレディスの垣根を取り払ったジェンダーフリーのファッションウィークとなって2年経つが、男女の新作を同時期に発表するという当初のコンセプト以上に、性にとらわれないジェンダーフルイドな服を見せる傾向が強まっている。

(ロンドン=若月美奈通信員)

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 ボマージャケット、パラシュートテープ、ユーティリティー。シモーン・ロシャのデザインとは対極にあるようなこれらの言葉が、今シーズンを語るのには欠かせない。初めて手がけるメンズウェアも続々と登場する。もっとも、新作はダイナミックな変化であるようで、甘さと強さが同居するロシャの世界そのものとも言える。ショーはピンクの小花がかれんな壁紙プリントのボマージャケットに裾からはみ出るふわふわのマーメイドスカートという意表をついた組み合わせで始まった。オーバーサイズのカーキのボマージャケット、パラシュートテープを引っ張ることでフォルムが変わるドレスなど、ミリタリーとロマンティックドレスという両極のハイブリッドが一着の中で、あるいはコーディネートで繰り広げられる。最初に登場したメンズモデルが着ていたのも、オーバーサイズのボマージャケットの裾からティアードフリルをのぞかせる白いスカートだった。ブルゾンにパラシュートパンツといったメンズスタイルもあるが、パンツのフロントにエプロンのようにフリル付きの布を垂らし、前から見るとスカートをはいているかのような男性モデルもいる。レディスウェアとメンズウェアのハイブリッドが、様々な形で展開される。スカートがふんわり広がるドリーミーなボリュームドレスは影をひそめ、パフスリーブで肩にボリュームを持たせながらもボトムはミニ、たっぷりの布地を使ったチュールドレスでも膝のあたりがすぼまってトランペットラインを描く。ペールカラーでつづりながらもいつになく力強い。

シモーン・ロシャ
シモーン・ロシャ

シモーン・ロシャ

 18年に第1回エリザベス女王英国デザイン賞を受賞したリチャード・クインは、国葬の前夜だった日程を翌日に変更し、女王に捧げる思いを込めたショーを披露した。黒いカーテンに囲まれた四角い空間に、黒いベールをかぶったクラシックなドレスのモデルが登場する。大きな黒いコサージュをつけたフィット&フレアドレスやコートドレス、レースのティアードドレスなど、ヒストリカルなデザインの黒いドレスが延々と続く。黒だけのコレクションを発表するといううわさは本当だったのか。そう思うやいなや、大音響のリズムとともに鮮やかな黄色いミニドレス姿のモデルが現れた。花柄やドット、赤やピンク。ビーズやスパンコール、羽根で覆われたミニドレスは首が見えないほどに胸が大きく膨らんでいる。ハートシェープを描くその様は、まるで心臓が飛び出してきたかのようなインパクトがある。頭をすっぽりと包む襟が三角錐{{すい}}のシルエットを描いた前シーズンの変化型と言えそうな、エイリアンのような異質なフォルムで、ロングドレスやジャンプスーツにも同じようなトップがついている。その後何着かのテントラインのコートドレスやマントを経てマリエで終了。今シーズンのトリにふさわしい、2部構成のダイナミックなコレクションを見せた。

リチャード・クイン

(写真=シモーン・ロシャはブランド提供、リチャード・クインは若月美奈)



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