ロンドン・ファッションウィーク・セプテンバー2022 エキセントリックなパワーの再来

2022/09/21 10:59 更新


 エリザベス女王の喪に服す期間に始まった23年春夏ロンドン・コレクションは、参加を休止したブランドもあるが、有力英国人デザイナー、JWアンダーソンとクリストファー・ケインがパンデミック(世界的大流行)以降初めてのショーを披露。数多くの若手のデビューとともにコレクションを盛り上げた。ボディーを露出したセンシュアルなデザインがリードするものの、優しい色や花柄、ハートのモチーフを取り入れたピースフルなニュアンスが広がっている。

(ロンドン=若月美奈通信員、ライター=益井祐)

 ソーホーの真ん中にあるJWアンダーソンの路面店の隣、ブランドロゴのネオンサインが続くかのように「ラスベガス」の文字が煌々(こうこう)と輝く。久しぶりのロンドンでのショーの会場となったのは、長年その光を絶やすことのないゲームセンターだった。それがフェイクなのか代用なのか、ゲームセンターを人々がトラップされてしまう、もう一つのリアリティーの象徴としたようだ。オーバーサイズのTシャツにはさらに誇張するかのように大きなタグが付けられ、ワンショルダーのスリップドレスは拡大されツイストして落ちる。上下逆さまのプルオーバーを肩で支えるのはメタルハンガー。クリエイティブディレクターを務める「ロエベ」と同じく、最近のアンダーソンはコンセプチュアルな気分だ。コンピューターのキーボードのJ、W、Aでロングドレスを飾りデジタルを表現。そして旅さえもスクリーン上で行われてしまうであろう、青い海のビーチやイルカの姿をデジタルプリントする。大きなメタルの球体ドレスがゲームセンターの光を映す姿はスクリーンの向こうの世界のようだった。〝Thank You〟。先日死去したエリザベス女王への感謝の気持ちがつづられた黒のドレスでショーを締めくくった。

JWアンダーソン

 クリストファー・ケインのショー復活は、女性のボディーをたたえる昨今のトレンドとその可能性を探る良い機会となったようだ。06年のデビュー以来、ボディーコンシャスを基本に、時にはかなり際どいアイデアを盛り込んだ新作を発表してきたケイン。今シーズンは透明ビニールで肋骨(ろっこつ)のように上半身を締め付けて小さなブラカップを添え、大胆に足をのぞかせるランジェリースカートで動きを出した。小さなブラカップは透けるロングドレスなどにも多用されている。透明ビニールトップにはシルバーメタルのバックルが付き、そのピースはカシミヤセーターの胸元も飾る。ビニールにつけられたアイレットと背中に掛けたカーディガンをナスカンでつないだユニークなレイヤードスタイルもある。突然登場した腕の人体解剖図をプリントしたショルダーストラップにどっきりさせられる。巨大な足の解剖図プリントのロングドレスもある。以前、花をテーマにしたとき、図鑑にあるような花の断面図のプリントを出したが、それと同様にボディーを違った角度から捉えたアプローチだ。淡いピンクやイエロー、ミントグリーンが中心とあってインパクトには欠けるが、このブランドの様々なエッセンスが盛り込まれたのびのびとしたコレクション。

クリストファー・ケイン
クリストファー・ケイン

クリストファー・ケイン

(写真=JWアンダーソンはブランド提供、クリストファー・ケインは大原広和)



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