台風19号で被災した福島のニット工場 再起目指し奮闘

2019/11/01 06:30 更新


 台風19号による大雨で甚大な被害を受けた福島県伊達市のニット工場が、再起を目指して歩み始めている。ボランティアの協力も得ながら、工場に流れ込んだ泥をかき出し、水没した編み機を製造元に修理に出す作業も進んでいる。

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 福島ニット産地大手の丸幸ニット、セントラルニットのほか、複数の下請け工場が被災した。幸いにも人的被害はなかったが、操業停止に追い込まれた工場もあった。福島ニット工業組合の三品清重郎理事長によると、被害を受けた編み機は産地全体で40~50台。ミシンや検針機などの付帯設備も水に浸かった。仮に全て新調しなければならなくなった場合、建物の修繕を含め、被害額は5億~6億円に上ると見られる。

 生産も3~5カ月は停滞すると見ており、秋冬物の本格生産が始まる来年3月に「間に合うかどうか」の瀬戸際。取引先も失いかねない。下請け工場は高齢化が進んでいることもあり、「廃業するところも出てくるのでは」と唇をかむ。

 レディスを主力にニット製品を企画・製造販売する丸幸ニット(藤倉奈々子社長)は、倉庫と工場の計3棟が浸水した。設備だけでなく、出荷を目前に控えていた秋冬物、在庫していた原料や糸も泥だらけになり、ほとんど処分しなければならなくなった。外注先に置いていた商品は無事だったため、糸始末など「できることから始めている」(藤倉社長)という。ただ、電気系統の設備にも水が及び、暗い中での作業ははかどらない。

 復旧にかかる費用や今後の経営など、横になると「不安が押し寄せてくる」日々。それでも「簡単には辞められない。前社長から受け継いだ歴史を途絶えさせたくない」と前を向く。台風の翌日に駆けつけてくれた従業員の思いにも支えられている。今週は、自動横編み機5台を修理に出した。

丸幸ニットの工場には2メートルを超える水が押し寄せ、天井を破った


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