ベルリンのローカルブランドが集結したPOP UPイベント(宮沢香奈)

2021/08/30 06:00 更新


ファッションジャーナリストの友人を誘い、西ベルリンの象徴である通称クーダムに程近いManakaa Projectのショールームで開催された合同POP UPイベントへ。ファッション関連のイベントへ出向くのは、ロックダウンが明けてからこれで2度目となる。

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Manakaa Projectとは、GOTS認定されたオーガニック素材と広島の老舗ガラスビーズMIYUKIをメインビジューとしたベルリン発のサステナブルブランドで、日本向けのPRを担当させてもらっていた経緯から様々な媒体で取り上げてきた。

同ブランドは、設立当初からインドのオーガニックシルクで有名なCocoon社と提携しており、そこで製造された100%ピースシルク(蚕を殺さず、羽化したあとの繭玉から紡いだ糸で作られるシルクのこと)のみを使用している。今回のPOP UPでは、これまでのシルクシリーズに加えて新作のサマードレスやブラウスも披露された。

Cocoon社の取り組みはオーガニックシルクの製造だけに留まらず、貧困女性の自立をサポートする社会活動も行っており、地元女性を雇い、シルクの製法を教えている。Manakaa ProjectはCocoon社とともに織り職人や刺繍職人とをサポートするための財団を設立し、新型コロナ感染症を治療するためのテント病院を併設したとのこと。コロナ禍で自分たちも大変な中、遠いインドで暮らす人々が生活に困らないようにサポートしていることに頭が下がる思いだった。同ブランドの素晴らしい活動は、こちらで詳しく記事にしているので、是非読んで知って欲しい。

この日参加していた他の3ブランドもベルリンを拠点とするローカルブランドだ。トラベル用のアイテムに特化した“KUVERT BERLIN”は、ランジェリーや靴を収納する巾着バッグ、荷物が沢山入る大きなキャンバストート、リゾート地に最適なビーチドレス、オーバーサイズのシャツなどを展開。ピンクやブルーといった鮮やかなカラーとオリジナルのグラフィックプリントが夏らしく、気分を高揚させてくれる。コロナ禍で自由が制限されている中で、今一番何がしたいか?と問われたら、迷わず“旅がしたい!”と答えるほど旅行に飢えている。軽やかでキャッチーなアイテムたちを見ていたら、余計に旅欲求が深まり、冷夏のベルリンを抜け出してキラキラしたリゾート地へ行きたくなった。

KUVERT BERLINのデザイナーはヴィヴィアン・ウェストウッドから学び、Wunderkindのウォルフガング・ヨープのアシスタントをしていた経歴を持つ。コンパクトに収めることができる機能性と着心地の良さだけでなく、デザイン性の高さも兼ね揃えている上に良心的な値段も魅力的だ。ドイツや近隣のヨーロッパ諸国からのみ仕入れた再生可能なリサイクルコットンをメインに使用しているなど、サステナビリティーも取り入れている。

PUGNAT”は、カシミア、モヘア、シルクなどの天然素材をメインとしたニットブランドで、体のラインにフィットしたシルエットとパフスリーブが特徴的。特に、専用の編み機で編まれた透け感のあるシースルーニットはとても繊細でソフトな肌触りが心地良く、上品なカラーバリエーションとともにエレガントな印象を与える。全てのアイテムはベルリンのスタジオで熟練のニッターによって作られており、糸はイタリアの工場から仕入れ、生地はヨーロッパのメーカーから取り寄せているとのこと。

小さいながら存在感のあるユニークなデザインが印象的だったのは“AGNES NORDENHOLZ”のバッグたち。天然のタンニンなめし革で丁寧に作られたバッグは、自然加工から生まれた品質の良さとクラフトマンシップの味わい深さを感じさせながら、堅苦し過ぎずアイコニックなデザインがとても良いと思った。太いロープハンドルとコロンとしたフォルムのコンビネーションも絶妙なバランス。他にも、ハンドドローイングで描かれたミニバッグや、天然素材のリネンでありながら撥水効果のあるリゾート向けバッグなど、欲しいアイテムが多数あった。

デザイナーのアグネスは、Marc Bohan、Helmut Lang、Jean-Charles de Castelbajacに師事し、Hartmann Nordenholzの共同設立者兼デザイナーとして14年間活動していたキャリアを持つ。バッグだけに限らず、ストール、アパレルライン、インテリアなども手がけており、どれも熟知したファッション知識とセンスを感じさせるデザインが秀逸。

ベルリンは決してファッションシティーではないけれど、サステナビリティーの思想を取り入れながら、デザイン性やクオリティーの高いローカルブランドがまだまだあるのだと、嬉しい発見ができた日となった。

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長野県生まれ。文化服装学院ファッションビジネス科卒業。

セレクトショップのプレス、ブランドディレクターなどを経たのち、フリーランスとしてPR事業をスタートさせる。ファッションと音楽の二本を柱に独自のスタイルで実績を積みながら、ライターとしても執筆活動を開始する。ヨーロッパのフェスやローカルカルチャーの取材を行うなど海外へと活動の幅を広げ、2014年には東京からベルリンへと拠点を移す。現在、多くの媒体にて連載を持ち、ベルリンをはじめとするヨーロッパ各地の現地情報を伝えている。主な媒体に、Qetic、VOGUE、men’sFUDGE、繊研新聞、WWD Beautyなどがある。



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