デニム産地の三備、匠の技×ハイテク

2015/06/15 06:33 更新


 日本のデニム産業は、ジーンズや洗い加工も含め、岡山県倉敷市児島、同井原市、広島県福山市周辺に集積している。かつての行政区分で備前、備中、備後とされるエリアにまたがっていることから、三備産地といわれる。

 世界的には、価格の安い中国、トルコが生産量を圧倒しているが、日本の職人が培ってきた匠の技術と、研究開発に裏付けられたハイテクが融合した三備産地のデニムは、海外からも高い評価を得ている。円安傾向も後押しし、輸出ビジネスも好調だ。長らく市況が低迷し、価格競争が厳しい環境にも、素材開発を地道に続けてきた結果が実を結び始めている。

一貫生産体制を確立

 最大手が、カイハラ(広島県福山市)だ。日本で唯一、紡績、染色、織布、整理加工まで一貫できる生産体制を確立している。ブルーデニムの国内シェアは50%以上。輸出も大きく、売り先は欧米を中心にカジュアルブランドからラグジュアリーブランドまで幅広い。今年度最大のヒットは、セルビッジデニム。50~60年前の旧式シャトル織機にこだわり、ストーリー性も価値に折り込んだ。

 コンピューター制御ではなく、ランダムなテンションで織り上げていくため、洗っていくうちに独特の味が出る。耳に売り先のブランドのネームを織りこんだり、ステッチをブランドカラーにするといったセット提案も好評で、欧州のメゾンブランドやカジュアルブランド、国内の大手SPA(製造小売業)と相次いで採用された。

 15年春夏は3、4割増の見込み。タイトな需給状況から、受注は1年先まで埋まっている。織機を追加し、来春には生産能力を1・5倍に引き上げる。ストレッチデニム「モーションフィットデニム」「EXフィット」など、5年前に設けた新商品開発チームの開発素材も好調で、15年春夏向けの販売は10%増となる見通しだ。

50~60年前のシャトル織機を使い、ランダムなテンションでゆっくりと織り上げる(カイハラ)
50~60年前のシャトル織機を使い、ランダムなテンションでゆっくりと織り上げる(カイハラ)

「薄く柔らか」実現

デニムなのに透け感がある1・5オンスのインディゴダンガリー(ショーワ)
デニムなのに透け感がある1・5オンスのインディゴダンガリー(ショーワ)

 デニムを軸に、高感度なテキスタイルを提案するショーワ(岡山県倉敷市児島)。同社が開発したウールデニムは、デニムの粗野感がない微妙な光沢や意外性のあるタッチが評価され、パリの素材展プルミエール・ヴィジョン(PV)で第1回PVアワードを受賞している。

 同社の看板素材が、細番のロープ染色糸を経糸に使った「奇跡の藍染めシリーズ」。一般的なデニムに使われる経糸の10分の1にもなる細番手を織り上げ、薄く柔らかな軽量デニムを実現した。価格競争が厳しいヘビーオンスのデニムと差別化でき、シャツやジャケットなど幅広いアイテムに採用された。15年春夏向けは、60番手4本撚り、80番手の三子撚りを経糸にした、軽く、柔らかく、きれいな表情のデニムが売れ、輸出を中心に2割増となった。

人気の高い細番手デニム。糸が切れないよう室内は湿度70度に保たれる(ショーワ)
人気の高い細番手デニム。糸が切れないよう室内は湿度70度に保たれる(ショーワ)


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