JNTO(日本政府観光局)が発表した統計で25年に日本を訪れたインド人は累計約31万5000人を記録。コロナ禍前の19年の約17万6000人と比較して約80%増と急激な増加をみせている。総消費額は約785億円で一人当たり約25万円。全市場平均約23万円を上回り、今や注目すべき一大市場になりつつある。
背景にはインドの経済発展と富裕層の日本の文化・歴史体験への強い興味がある。富裕層は教育水準も高く、知的好奇心を満足させる日本が強烈に刺さるのだろう。一方、若い層はユーチューブやティックトックに流れてくる日本のアニメ、音楽、ファッション、グルメなど多岐にわたるコンテンツをきっかけに興味を持つ傾向にある。
ロケ地ツーリズム
26年はさらに訪日インド人市場が増加すると思っている。理由は爆発的な観光ブームをけん引するボリウッド(インド映画)のロケ地になったからだ。場所は北海道。著名なインドの俳優兼プロデューサー、アーミル・カーン制作による『Ek Din』(英語題名One Day)が今年5月に公開されたが、舞台が北海道なのだ。雪景色や仏像、大自然、ダウンやイヤーマフに帽子などの真冬の重ね着ファッション。自国では難しいが一度は体験したいと思わせる要素がたっぷり盛り込まれている。
映画の製作にあたり日本の観光庁が誘致・支援を行っている。観光庁は十年以上前からインド市場への取り組みとしてロケ誘致を行ってきている。これは「ロケ地ツーリズム」と呼ばれ、話題になった映画やドラマの舞台をめぐるいわゆる「聖地巡礼」による集客効果を狙っている。筆者もかつてスイスの山岳地帯でインド人の団体観光客と多数、遭遇した経験があるがスイスは早くからロケ地誘致を行い、「ロケ地ツーリズム」の先駆的存在になっている。日本政府もこれにならってのプロモーションといえる。
柔軟な対応必須
徐々に各種効果がみえてきているインド市場だが、今後は集客数だけをのばすのではなく受け入れとのバランスを考慮していく必要がある。富裕層ともなればより自分たちに最適な旅行日程を希望するため、多様な要望に応えることは必須だ。英語が通じないという不満もデータ上にあがっている。ベジタリアンなど宗教的な食事制限が多く、自分の意思をしっかりと持つ国民性もあり日本的なファジーな対応では納得できず反発も出ると予測。地方での摩擦が懸念される。新しい商機となるかオーバーツーリズムとしてマイナス要因となるか。カギは我々、日本側にあるといえる。
(トラベルジャーナリスト・寺田直子)
