伝説のジャズ喫茶が閉店 65年の歴史に幕

2026/08/18 12:30 更新NEW!


ラストイベントでの白熱のステージ

 ここ数年、日本が生んだ独自の文化として海外でも注目されるジャズ喫茶。巨大なスピーカーと高級アンプで大きめな音を楽しむ、ジャズ喫茶ならではの音楽鑑賞法を体感すべく、アジアや欧州から日本の名店を訪ねる人も急増している。

 時ならぬジャズ喫茶ブームが盛り上がる中、名店「新宿DUG」が6月に閉店した。入居するビルの老朽化による解体により65年間続いた歴史に幕が下ろされた。閉店が告知されると、古参の常連客に加え、SNSで店の存在を知った20代の音楽ファンが詰めかけ、店内は営業最終日まで連日超満員となった。

残された〝文化遺産〟

 新宿DUGの歴史は、1961年に日本大学芸術学部で写真を専攻していた中平穂積氏が、ジャズへの熱い思いから新宿にジャズ喫茶「DIG」を開業したことに始まる。蛮勇を奮っての学生起業は折からのジャズブームに乗り大成功。その数年後には姉妹店となるDUGをオープン。新宿という場の力もあり、多くの学生や文化人が詰めかける人気店となった。

 日本社会が政治の季節を迎えた60年代、映画・演劇・音楽と、あらゆる芸術ジャンルで過激な表現者が活躍し、既存の表現を刷新していった。DUGは、過激なアジテーターたちのサロンとしても機能し、劇作家の寺山修司や映画監督の若松孝二ら芸術の革命児たちが客席に座り、大音響のジャズに耳を傾けた。

次代に受け継ぐ動き

 24年に中平氏が88歳で亡くなり、その後はご子息が経営に奮闘している中、無念の閉店となった。営業最終日のラストイベントは無観客で行われ、ゆかりのあるミュージシャンたちの演奏が、配信映像によって届けられた。

 華やかな即興演奏に送られて歴史の幕を下ろしたDUGだが、その文化遺産を受け継ぐ動きが既に始まっている。DUGのオーナーのみならず、写真家としても活躍した中平氏の作品を記録・保存するドキュメンタリー映像の撮影が開始され、製作を支援するクラウドファンディング「中平穂積・ジャズの記憶と記録」プロジェクトが、モーションギャラリーで展開している。開始早々の7月末の段階で既に100万円を超える支援金が全国のジャズファンから集まり、盛り上がりを見せている。

 自己の名声を高めることには無頓着で純粋にジャズとジャズ喫茶文化を愛した中平氏ゆえに、撮影した写真・映像のデジタル化が遅れ、経年劣化し続けている。ジョン・コルトレーンにマイルス・デイビス、中平氏がいきいきと捉えたジャズ・ジャイアンツの写真を適切に保存し、後世に伝えることは、残された我々世代の宿題ではないかと感じている。

(映画作家・高橋慎一)



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