瞳の向こうに光るもの☆2018夏編(宇佐美浩子)

2018/07/23 14:50 更新


先日、とても面白いタイトルの書籍を目にした。

『EYE LOVE YOU』

繊研新聞社同様、今年70歳のフランスのコスメブランド「TALIKA」の代表取締役兼クリエイターのアレクシス・ドゥ・ブロスの著書だ。

そもそもの出発点がパリの病院に勤める女性眼科医、ダニエル・ロシュの治療の産物に由来するブランドなのだから、なんとも茶目っ気のある発想といえる。

ウルフ作(メイナク)《ジャガー》 ©BEI collection/ by Andreas Heininger

さて、時を同じくして取材先のローマにて、出会ったばかりのブラジル人ジャーナリストが、興奮気味にスマホで見せてくれたサンパウロからの最新ニュース(本展開催日当日)。そこにはプリミティブな木彫りの動物と共に「ブランジル先住民の椅子 野生動物の想像力」とある。驚くことに、ブラジル国外で開催される初の展覧会、かつまた1本の丸太から椅子を作っているというのだ!

幸いにも本展開催地は、東京都庭園美術館だと判明し、加えて本展監修者である樋田豊次郎館長の講演会もあると知り、帰国後早速出向いた。

東京都庭園美術館 本館・新館 南面外観

展覧会の準備のため、はるばる地球の反対側にある現地へと趣き、2018年現在、27部族にわたる350点余りの椅子のコレクションの中から92点を選び、その多くが「メイナク」族の人々の手掛けた椅子が、現在展示されているという。

“どれもみな力強い芸術作品で、目力(めぢから)がなんともスゴイんです。数ある動物彫刻の中でもこれほどまでに目力が強い作品は珍しいです”

参考までに、その鋭い眼光の目には淡水産の貝を使っているとのこと。

前述の書籍のタイトルしかり、やはり人も動物も「目」に宿る力というのは、筆舌に尽くし難いものだと痛感。

ちなみに、9月17日までの会期中、夏休み期間に当たる7月20日から8月31日までの毎週金曜日は「サマーナイトミュージアム」として夜21時まで開館する。

また本展の会場構成を手掛けた世界的建築家、伊藤豊雄氏と、本展を提案くださったというアンドレ・コヘーア・ド・ラーゴ駐日ブラジル大使、そして樋田館長による「伝承芸術の魅力と底力」に焦点をあてたシンポジウム「ブラジル先住民の椅子、そして現代の美」が、7月29日14時から17時まで開催予定だ。

アートな夏を満喫したい☆

マワヤ作(メイナク)《サル》 ©BEI collection / by Rafael Costa


そこで7月の「CINEMATIC JOURNEY」のキーワードはそれぞれの夏の思い出をビジュアルとして記憶する最初の器官「目」にスポットを当て、「瞳の向こうに光るもの☆2018夏編」をテーマに、アーティスティックなシネマセレクションをご一緒に!

まずは美しい日本の風景の旅からスタート。


『ピース・ニッポン』と題し、8年の歳月をかけ、全国47都道府県、200箇所以上の映像から、極上の美しさを誇る瞬間と精神性を111分の旅にまとめたのが本作だ。

おそらく日本人の多くが、それぞれリアルに目にすることが難しいと思われる絶景の数々が、ナビゲーターを務める小泉今日子と東出昌大の美しい日本語の台詞と共に綴られていく。


監督は、映像作家・映画監督・映像プロデユーサー・演出家として活躍する中野裕之。

東日本大震災を経験した映像作家たちにより、映像とITを駆使してアーカイブ化し、日本を目に見える形、耳で聞こえる形で、後世に遺す「ピース・ニッポン・プロジェクト」を2011年にスタート。その第一弾となるのが本作だそう。

国内外のアーティストのミュージッククリップを手掛けてきたキャリアのある監督らしく、音楽へのこだわりも他ならない。とりわけ細野晴臣の『悲しみのラッキースター』や竹内まりやの『いのちの歌』はいかにも監督らしい。

なお公開記念として7月31日まで、東京、品川の写真と映像による「ピースなニッポン展」がキャノンオープンギャラリー2で開催中。


『ピース・ニッポン』

新宿バルト9ほか全国ロードショー中

©2018 PEACE NIPPON PROJECT LLC


「瞳の向こうに光るもの☆2018夏編」をテーマに、アーティスティックなシネマセレクションをシェアしている7月の「CINEMATIC JOURNEY」。次なる目的地はキューバ!


映画ファンのみならず音楽ファン、いえいえ、ある意味カルチャーシーンを席巻した、今回のキーワードの一つ「伝承的」という表現が似つかわしいキューバを代表するあのバンドが、再びスクリーンに登場する!

新作にして最終作となる珠玉の1本『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ★アディオス』。


ヴィンテージ赤ワインのごとく、味わい深さを増す歌声が魅力のディーバ、オマーラ・ポルトゥオンド(写真上)を筆頭に、顔なじみのあるメンバー。

中でも微笑ましい組み合わせとしては、トランペットのグァヒーロ・ミラバルは、孫のグアヒリートが祖父同様トランペットとして参加。またオリジナルメンバーの一人、アマディート・バルデスの娘イダニアもヴォーカル兼パーカッションとして加わり、幅広い世代構成でバーションアップを重ねている。


もちろん忘れてはならない「人生にアディオス!」を告げたメンバーたち。彼らのステージで演奏することへのプロ意識の高さは、スタイリングにも表れていると思う。

たとえば昨年他界されたパビ・オビエド(上記)。頭の先(帽子)からつま先(靴)まで、そのこだわりぬいたトータルコーディネートは実にクール!またそうした慣習は、現在のステージにも息づいているよう。

そして心残りではあるものの、オマーラのこの言葉を目にしたなら、ファンもきっと、「グラシャス&アディオス!」と自然に声をかけたくなるだろう。

“グループはこのままでは存続しないけれど、私たちはみんな演奏し続ける。そして一緒に音楽を作り続けるわ”(本作資料より引用)


『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ★アディオス』

7月20日よりTOHOシネマズ シャンテほか全国順次公開

©2017 Broad Green Pictures LLC


「瞳の向こうに光るもの☆2018夏編」の締めくくりは、「ピースなニッポンの夏」とも称したいイベントで。

©h.usami

所は「那須りんどう湖レイクビュー」。 

かつて当コラムでも、毎年5月にロンドンで開催される英国王立園芸協会主催の「チェルシーフラワーショー」を題材にした映画「フラワーショウ!」※を紹介したことがある。

≫≫エネルギッシュな女性と旅する映画(宇佐美浩子)

その世界的ガーデンショーの総裁を務めるエリザベス女王に、「あなたは緑の魔法使いね。」と絶賛され、今年10個目の金メダルを獲得した日本人庭園デザイナー、石原和幸氏が園内の花壇をプロデュース&監修しているというのだ。さらに中央花壇には、当園随一の人気アニマル、アルパカのオブジェも登場!(写真上)実物同様に愛らしい眼差しが忘れがたい。

加えてこの夏は、例年の1500発から2倍の3000発にグレードアップした花火大会が8月に9回予定されている。湖上に打ち上げられるフォトジェニックな水上・水中花火は、一瞬が永遠の思い出に☆

©h.usami



うさみ・ひろこ 東京人。音楽、アート、ファッション好きな少女がやがてFMラジオ(J-wave等)番組制作で長年の経験を積む。同時に有名メゾンのイベント、雑誌、書籍、キャセイパシフィック航空web「香港スタイル」での連載等を経て、「Tokyo Perspective」(英中語)他でライフスタイル系編集執筆を中心に活動中



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