銀座の街もここ数年で、変貌を遂げている。
とはいえその礎となっているのは、やはり銀座ならではの「文化の香り」だと思う。それはまるで、コーデ仕上げのフレグランスのように。
ファッションやジュエリーのみならずグルメに至るまで、国内外の名だたるメゾンやレストランが軒を連ねる中、歴史ある劇場や、新しい商業施設内に誕生した映画館、また新旧様々なアートスペースが、街のあちこちに点在するのもまた銀座スタイルだ。
そこで9月の「CINEMATIC JOURNEY」は、「アートなシネマは銀座が似合う」をテーマに、銀座でアートなシネマ散歩をご一緒に!
というわけでいきなりですが、銀座でアートなシネマ散歩の幕開けとなったのが、世界にも展開する1928年創業の老舗、日動画廊で目にしたポップアート展「PHILIP COLBERT NEW PAINTINGS」!
繊研新聞の読者ならご存じの方もおいでかと思うのですが、フィリップ・コルバートとは、ファッションとアートの融合がテーマの遊び心あふれる「Wearable Art」
という表現そのもののファッションレーベル「Rodnik Band」を2004年に立ち上げ、国内外の有名セレクトショップで展開する一方、音楽、デザインほか様々なジャンルで才能を発揮し、近年ではそうした全てをアートとして表現する新世代のPOPアーティストとして活躍。
そんな彼のコレクションをまとうセレブリティの中には、レディ・ガガ、シエナ・ミラー、カーラ・デルヴィーニュ、リタ・オラなどなど個性豊かな顔ぶれがズラリ!
ちなみに出身校は、かのケンブリッジ公ウィリアム王子夫妻と同じセント・アンドリューズ大学で、美術史や哲学を専攻されたとか。
“アートの魅力はFREEDOM(表現の自由)とDIALOG(ある種の対話)にあると思っている”
と語る通称「ロブスターマン」ことコルバートさん。さかなクンとのコラボ作品も展示されるなど、現在開催中(~9月18日)の彼の個展は日本初!
ということもあり、超大型の力作をはじめ、彼の分身であるロブスターが登場する初のVR(virtual reality)ゲームが初公開されるなどなど、性別年齢国籍不問で楽しめるイベントも必見。
さて、突然の寄り道から始まった「アートなシネマは銀座が似合う」がテーマの9月最初の「CINEMATIC JOURNEY」。まずはこの春オープンした東京ミッドタウン日比谷内に誕生したザ・ムービーパレス(映画の宮殿)こと、TOHOシネマズ日比谷で9月14日から公開の『プーと大人になった僕』から!
前述のアーティスト、コルバートさんと同じスコットランド出身のユアン・マクレガーが主演の本作。
「プー」とはあの「くまのプーさん」のことで、幼少期からの親友クリストファー・ロビンと数十年の時を経たある日、運命的再会を果たす心温まるストーリー。
それは同時に、クリストファーの人生で忘れ去られていた「大切な何か」との再会も…
ではなぜ「なぜ本作がアートなシネマ?」なのかというと☟
- 不朽の名作、A.A.ミルンの「クマのプーさん」(児童文学)の映画化。
- 実物のぬいぐるみ(プーさんを筆頭に立体的なキャラクター)を使用して実写映画にするのは本作が初めてとのこと。
また本作資料によれば、下記の3匹を筆頭に、ぬいぐるみの創作に関しては細心の注意を要したそう☟
- プーさんは適切な抱き心地の良いお腹であること
- ティガーは効果的に驚きや怒りや当惑の表情を表せること
- イーヨーはグッタリ具合が適切であること
こうして完成したアカデミー賞受賞歴を誇る特殊効果の「アニメ―テッド・エキストラズ」のクリーチャー・ビジュアル・エフェクト・チームによる「スタッフィーズ」(現場での愛称)の名演技に要注目のほど!
9月14日(金)より全国ロードショー
©2018 Disney Enterprises, Inc. All rights reserved
「アートなシネマは銀座が似合う」がテーマの9月最初の「CINEMATIC JOURNEY」。
ゴールは銀座4丁目にあるミニシアター、シネスイッチ銀座で9月15日より公開の『顔たち、ところどころ』をご一緒に!
人物を称する際に使用する「〇〇の父または母」とは、よく目や耳にするが、アニエス・ヴァルダは先駆者的女性映画監督とあり、「ヌーヴェルヴァーグの祖母」なのだそう!
そんな巨匠とは孫のような、54歳の年齢差もなんのその。世界の様々な地を巡り、そこに暮らす人々を撮影し、巨大ポートレートにしてその地の壁に貼るという、参加型アートプロジェクト「Inside Out」で知られる写真家にしてアーティストのJR。
彼のスタジオ付きフォト・トラック(外観がカメラのデザイン!)と共に実現した「アート」なロードムービーは、目的地未定のフランスの田舎町を巡る、スローライフ的香りが心地よいドキュメンタリーだ。
- 他人に関心があること。
- 有名ではない権力を持たぬ人々に対して興味があること。 (本作資料より)
上記の類似点を持つ二人が、およそ18カ月の撮影期間を経て完成した本作の登場人物は、フランスの村で出会い、話を聞き、そしてポートレートを撮影し、壁面を飾った人々。
魔法のような瞬間の積み重ねで完成した本作資料に記された、ヴァルダとJRのインタビューのコメントの中で、最も感銘を受けてJRのコメントを最後にシェアさせていただきたく。
“瞬間は長続きするわけじゃないけど、心に刻まれるよね。”
9月15日よりシネスイッチ銀座、新宿シネマカリテ、アップリンク渋谷ほか全国順次公開予定
©Agnes Varda - JR - Cine-Tamaris - Social Animals 2016
P.S.銀座の新たなランドマークの一つとして注目の「G6(=GINZA SIX)」6階にあるギャラリー「THE CLUB」で、11月10日まで開催している「Unbearable Lightness-堪えがたいほどの光」というタイトルに魅かれ、立ち寄ってみた。
幸いにもニューヨーク在住の作家、ジャッキー・サコッチオ女史と遭遇!話によれば...
“過去に映画化されたミラン・クンデラの小説『The Unbearable Lightness of Being-存在の耐えられない軽さ』より影響をうけています。人生で辛いことがあっても絵を描けることに感謝し、明るさを見出したのです”
こうした経緯から、今回の一連の新作の印象をふまえネーミングされたという本展。私の好きな俳優、ダニエル・デイ=ルイスとジュリエット・ビノシュが主演の思い出深いシネマの1本が、アートとして目にした瞬間に感謝☆
HIROKO USAMI
東京人。音楽、アート&シネマ、ファッション好きな少女時代を経て、FMラジオ(J-waveほか)番組制作で長年の経験を積む。同時に書籍や雑誌の企画編集や外資系航空会社webでの連載、有名メゾンや各種イベント関連の業務にも携わる。また「senken h」創刊時からスタートした繊研新聞とその関連メディアでのコラボは、現在もライフスタイル系記事を中心に熱烈執筆活動中!