【25年春新卒採用の現状や学生の意識の変化は】MORIパーソネル・クリエイツ副社長 森雄祐さん 採用早期化、売り手市場が加速

2024/04/19 00:00 更新


森雄祐さん

 ファッション業界の採用はコロナ下での減少傾向から、23年卒から増加傾向に転じ、売り手市場の状況が加速。今回は3月から本格化している25年春新卒採用の現状や、学生の傾向について、ファッション・アパレルの人材関連サポート企業に聞きました。

入社後の教育、働く環境作りにもに力

 ファッション業界に特化し、企画やMD、営業など主に本部機能の人材紹介を中心に、総合人材ビジネスを手掛けるMORIパーソネル・クリエイツ。「25年春新卒採用は早期化と売り手市場の状況が進み、学生の意識の変化への対応も必要」と話す。新卒採用の現状や、学生の意識について森雄祐副社長に聞いた。

席取り合戦の様相

 ――採用活動の現状は。

 FB(ファッションビジネス)業界では、23年卒から企業の採用意欲が戻り始め、24年卒でコロナ前に近い状況まで復活し、売り手市場に切り替わりました。

 採用数は23年卒から右肩上がりで増え、販売員はコロナ下で減らした人員を適正数に戻す動きと、転職者が多かったので欠員補充で増加。総合職も各社さみだれ式に採用を再開し、企画職の採用も少しずつ復活中。25年卒採用は受け皿的にはコロナ前に戻りました。

 一方、各社の説明会や採用イベントへのエントリー数は23、24年卒と減少し、各社は25年卒向けの採用活動を強化。大手就職サイトの採用ナビ以外に、自社ホームページなどでも募集し、合同セミナーにも参加。使用する就職サイトも複数に増やしつつ、採用活動を前倒しする動きが加速。大学3年生の夏休みから2月までのプレ採用期間から動き、3月を待たずに内々定を出す企業が増えています。

 ――学生の動きは。

 25年春卒の大学生・大学院生の内々定率は、3月1日時点でマイナビの調査で約34%、リクルート系の調査で大学生は約40%に上昇。4月1日時点ではマイナビ約47%、リクルート系58.1%と、回答者の半数前後が既に1社以上の内々定を持ち、売り手市場の状況が進んでいます。全産業的に採用意欲が高まり、採用を再開した航空関連やホテル業界に、アパレル販売職志望の学生も一定数が流出。FB企業にとっては母集団作りが難しくなっています。

 以前は5月の大型連休明けに、総合職で志望企業の選考に残れなかった学生が、ゼロから再び活動を始めました。今は3月1日に滑り止めの内々定を得た状態で、より志望度の高い企業に絞り、夏休み前まで就活を続ける学生が多い。FB業界でも、ナビで説明会の受け付けが始まる3月以降を軸に、いい人材を早期に確保しようと、二段構えでプレ期にも採用を行う企業が増え、席取り合戦の様相です。

情報の集め方も多様化

 ――合同説明会の状況は。

 「マイナビ2025」と共催で「FB就職セミナー」を東京は3月5日、大阪で11日に開催。21年卒向けは中止、22、23年卒向けは東京1カ所で出展企業が1ケタ、24年卒向けは14社でしたが、今回は会場を東西2カ所に戻し、東京は30社、大阪は17社の会場を用意して昨年11月に予約が完売。学生も東京で700人以上、大阪は約350人が参加して好評でした。

「FB就職セミナー」東京会場

 50社以上の個別説明会に学生がエントリーしていた時期もありますが、情報の集め方が多様化。今は就職ナビに登録すればスカウトメールがたくさん来るため、ウェブセミナーに画面をオフにして参加。取捨選択後に個別説明会に申し込み、合同セミナーは大規模なものだけ参加する人が多い。各社の説明会もプレ期、3月以降とも集客に苦戦し、FB就職セミナーは企業の需要が完全に戻ったので、26年卒向けは東京50社、大阪25社規模で開催の予定です。

 ――学生の意識の変化は。

 コロナ前と比べ新卒の数は大幅には減っていませんが、SNSなどで起業しやすくなり、独立志向の学生が増加。高収入は求めず、自分のやりたいことをやり、非正規の仕事で生活費を得るなど、若者の仕事観や人生設計が変化しています。企業も終身型と併せて、ジョブ型採用の導入を検討する必要がありそうです。

 当社の勉強会参加企業へのアンケートを見ると、内定辞退率は21年卒採用の販売職の約21%から、23年約45%、24年52%と上昇。業界の志望者も減るなか、定着率向上策や、採用だけでなく入社後の教育を強化するべきです。企業は人材を経営課題の大きな柱とし、自己成長の保証、賃上げや長く働ける環境作りにも力を入れてほしいですね。

(繊研新聞本紙24年4月19日付)

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