9月のSNSを沸かせた「匿名宝飾店」。エフ・ディ・シィ・プロダクツの「4℃」がブランド名を伏せて運営していた期間限定店だ。9月8~24日の累計来場者数は5500人だった。
【関連記事】原宿で開催中の「匿名宝飾店」 正体は「4℃」、約4000人が来店
東京・原宿のキャットストリートに構えた同店。ブランド不詳のユニークなコンセプトが注目され、SNSで拡散された。「初日こそ台風の影響を受けたが、土日は想定の3倍の来場で、その後も同水準を維持した」とし、連日整理券を配るにぎわいだった。
期間中の20日にブランド名を明かした。「4℃は昨年50周年を迎え、多くの方にブランド名を知って頂いた。その今だからこそ、蓄積されたイメージを離れ、今一度原点に戻り、ジュエリーそのものを見てもらいたいとの思いがあった」(瀧口昭弘社長)と企画背景を伝え、さらに大きな話題を呼んだ。正体判明後も、女性中心に会期終了まで来場者が途切れなかった。
20日までの来場者には、店を出る際に初めてブランド名を明かした。アンケートでは83%が「4℃のイメージが変わった」、78%が「正体は意外だった」と答えた。ほとんどが好意的なイメージを持ったようだ。
4℃は、平成時代にクリスマスなど男性から女性へのギフト需要で市場を席巻した。商品企画も、ギフトに好まれるベーシックなデザインの限定品を前面に出していた。しかし、市場は女性が自ら購買する自家需要が主力になった。さらに重視され始めたのはトレンド感やファッション性。4℃もその変化に合わせ、この数年、女性の支持を第一にした企画とブランディングへかじを切ってきた。しかし、消費者の間ではまだ以前のイメージが残っていたのではないだろうか。
同社は新たな4℃を伝えるため23年以降、ブランドプロモーションを本格化し、既存とは別予算で3年で約5億円を投入すると表明していた。今回の企画はその一環と見られ、一定の手応えを得たといえそうだ。
(中村維)