備後産地の人材育成プロジェクト 第4期が開校

2020/07/10 06:27 更新


講師に縫製を学ぶ受講者ら

 備後産地の誇る高い縫製技術を受け継ぐ担い手を育成する繊維産地承継プロジェクト「HITOTOITO」(ヒトトイト)がこのほど、福山市内で第4期となる開校式を開いた。受講者は約1カ月間でジーンズの丸縫い技術や物作りの知識などを習得する。19年9月にスタートして以来、回を追うごとに参加者は増えており、参加者の中には同産地で就職した人もいる。9月には第5期を予定しており、現在申し込みを受け付けている。

(小畔能貴)

 同プロジェクトは、後藤和弘加富屋社長を委員長に、備後の縫製関連企業8社で立ち上がった。期間中はデニムパンツを作るために必要な知識や技術を学ぶだけでなく、備後絣の歴史やデニムの専門知識を学ぶ座学、縫製工場などの見学も行う。

 19年度に3回開校し、1期と2期はそれぞれ6人が受講、3期は12人に増えた。今回の希望者数は12人になったが、遠方から参加が難しいなどの理由で、10人での開校となった。今回から場所を変更し、メンバー企業であるディスカバーリンクせとうちが事務所を移転した建物の2階を活用している。

 これまでの受講者は、受講後に産地で就職した人のほか、ユニフォームメーカーから人材育成の一環で参加した人など様々な人がいる。同プロジェクトに対する業界の反響もあり、新型コロナウイルスによって中座したものの、東京の大手専門店も新入社員研修の一環として受講を検討していた。地元の大手デニムメーカーもデニムの提供に名乗りを上げている。

 同プロジェクトでは、受講生や卒業生が協力してイベントに参加しているほか、ワークショップも実施。人材育成だけでなく、メード・イン・フクヤマの魅力も積極的にアピールしている。

7月1日に行われた開校式

プロジェクト委員長の後藤和弘加富屋社長

 ヒトトイトは、メイド・イン・ジャパンの高い品質が今後失墜してしまう危機感から立ち上がりました。5~10年という短期的な視点では、技能実習生の力も借りて日本製=いいモノという評価は維持できるでしょうが、その後はその根底が崩れかねません。工場全体を管理できる次世代の人材が育つこと、そして何より実際に物作りに携わる人がいなければ、産地の生き残りは難しくなります。

 備後産地は分業が多く、1社だけが生き残っても強みのサプライチェーンは成り立ちません。物作りするうえで最も大事なのは人。賛同してくれる企業と協力し、一人でも多くの人に縫製技術を伝えていきたいと思います。

プロジェクト委員長の後藤加富屋社長


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