【今日は何の日?】メグレ警部の作者とパリの名店

2017/09/04 04:23 更新


 1989年9月4日は、小説家のジョルジュ・シムノンが世を去った日です。86年の人生でした。ベルギーのリエージュの生まれ。パリに移るのは22年のことです。ジュール・メグレ警部を主人公とする「メグレ物」だけでも百編以上を書いています。メグレ物で楽しいのは、居ながらにしてパリ散歩ができること。カフェやレストランが実名で出てきて、憧れてみたり、懐かしく思いだしてみたり。これはむしろシムノンが生粋のパリっ子ではなかったことと関係しているのかも知れませんが。

 短編に『街中の男』があります。この中に「オーバーはイタリアン通りの『オールド・イングランド』店のもので…」。これはメグレが追っている男が着ているコートの銘柄です。古きよき時代の名店でした。店内にだけは英国の空気が流れていたものです。おそらくシムノンも、いつか買い物をしたことがあるのでしょう。(服飾評論家・出石尚三)

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