染色技法の一つであるプリント(捺染)は、ハンドスクリーンからフラット自動スクリーン、ロータリースクリーンといったように、作業の効率化・高速化を焦点に技術革新が進んできた。しかし近年、版を使わないデジタルプリントが注目されている。デジタルプリントの種類や特徴、機器の進化、現状などを紹介する。
従来のアナログ方式はスクリーン紗(版に使われる織物)にインキ浸透部を設けたり、円筒表面のゴムに凹凸を刻むなどした版を用いる。一方、デジタル方式は、パソコン上で作成したデジタルデータを用い、デジタルプリント機器で生地や製品に出力する。
身近な年賀状プリントに例えると、80~90年代に大ヒットした家庭用の小型印刷器「プリントごっこ」がアナログ方式。あるいは芋版や木版画もそう。今日では家庭用のパソコンやプリンターが普及しているが、これはデジタル方式だ。
テキスタイル・アパレル分野も出力機はインクジェットプリンターが主流になっている。アナログ方式と比べると小ロットに向き、多色やグラデーションの表現も得意だ。設備も省スペースで済み、作業環境もクリーン。
インクジェットプリンターを使う以外に、オフィス事務器の複合機と同様の感光ドラムとトナー(粉体)インキを使った静電捺染方式などもあり、実用化の準備も進む。 世界的にデジタルプリントが本格普及したのは90年代後半からで、イタリアのコモ産地で導入・開発が先行した。これが最近では新興国を含む世界規模で波及しつつある。
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