1個16万円もすぐ売れる 広がる香水の世界(資生堂美容技術専門学校校長・大久保紀子)

2023/11/21 12:00 更新


「Gratte Ciel Tubereuse Criminelle」大好きな「セルジュ・ルタンス」の香り

 最近、香りに関する話題が増えています。これまでにないニッチなフレグランスを扱う香水専門のセレクトショップには、男女を問わずいつも人が入っていて、スタッフの方になかなか声がかけられないほどです。1個16万円という香水も、入荷をすればすぐに売れるそう。デパートでのフレグランスのイベントは、年を追うごとに規模が拡大しており、海外ブランドの責任者も来日してプロモーションに力を入れています。私も「セルジュ・ルタンス」の香水をはじめエッセンシャルオイルやお香などの香りものが大好きなので、この状況はこれまで知らなかった香りに出合うチャンスが増えるので大歓迎です。

欧米の香水文化

 スキンケアやメイクアップなど世界の化粧品の売り上げ構成を見ると、欧米は約20%がフレグランスですが、日本はまだ2%程度です。古来より、服や髪に香りをたき染める=うつす程度のほのかな香りを良しとしてきた日本にも、いよいよ欧米のように、香りがしないなんて存在しないも同然というほどの香水文化が広がるかもしれません。

 その予兆はZ世代の学生たちに感じられます。当校の香りの授業でのアンケートでは、なんと85%の学生が何かしらの香りをつけていると答えています。人気の香りは、優しく甘く爽やかなフローラル系のオードトワレやオーデコロンといった軽めのものがほとんどです。学生にはあまりなじみのない大人っぽくて濃厚な印象のアンバーやシプレーといった香りの見本をみんなで嗅いでいると、気分が高揚するのかだんだん声が大きくなり、話が止まらなくなるという面白い発見もありました。知れば知るほど興味が湧くようなので、昨今のフレグランスの活況ぶりは、彼らの香水への興味をさらにかきたてることになりそうです。

 また、この数年続いたコロナ禍は、香りを積極的に楽しむことに一役かったようで、在宅での気分転換に自然の花や樹木などのアロマの香りを活用したり、マスク着用なので周りを気にせずに自分の好きな香りを思う存分つけるようになったと聞きます。

新しい香り楽しむ

 香りにもトレンドいう流行があるという意味ではファッションの一部ともいえますが、人によって好き嫌いがはっきりと分かれるもっと個人的なものかもしれません。また、アロマテラピーとして気分を良くするだけではなく、病気やけがの治療に用いられるような実効的な側面もあります。香を聞くという日本独自の文化もありますので、さらに新しい香りの楽しみ方が生まれるかもしれませんね。

(資生堂美容技術専門学校 校長・大久保紀子)



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