【ファッションとサステイナビリティー】ティンパンアレイ平野大輔社長 リメイクと目利きで在庫品の消化促進

2022/11/30 05:29 更新


平野大輔さん

 18年にワールドグループ入りしたティンパンアレイ(東京)は、デザイナーズブランドの古着店「ラグタグ」「rt」を運営する。古着店業態そのものが資源を無駄にしないビジネスといえるが、当然ながら売り物にならないものが一定ある。東京・国立の倉庫に眠る約30万点の在庫の中から、リメイクして新しい商品によみがえらせたり、キュレーターの目利きで選んだ商品を展示販売したりして、売れづらい商品の消化促進も同時に進めている。

 元々環境配慮をうたっていたわけではないですが、良い物を長く着ようという風潮が一般化してきました。CtoC(消費者間取引)が普及し、人が着たものを購入することにも抵抗がなくなりましたしね。環境意識の高いZ世代の利用で古着は確実に文化になった気がします。

 通常の古着の販売に加え、いくつか取り組んでいます。一つはリメイクブランドの販売です。毎年7万~8万点買い取り、在庫も30万点ほどありますが、仕入れたものの中にはデザインが古かったり、傷や汚れが目立ち値段がつかないものも少なくありません。

 こうした商品は自分たちでリメイクし、イベント販売をしていましたが、その後ワールドのグループに入ってからは共同で取り組むことに。2年ほど前に「ビーリリースト」というブランドを立ち上げました。我々の店舗とオンラインで販売しています。元々持ち込まれるものはブランド物が多いため、良い素材を使っているものが多い。それをグループの生産会社、ワールドプロダクションパートナーズの若いスタッフの裁量で新しい物にリメイクしています。当初はいい物を作ろうと思うあまり2万~3万円になって売りずらかった。それでは捨てずに再利用しようという目的が果たせないため、現在は1万円台で売れるように製作単価を下げています。

 一点物が多いですが、今は少し量を作れる商品にもトライし、岡山の工場、ワールドインダストリーファブリックに生産委託するものもあります。春にはTSIさんと一緒に大丸京都店で期間限定店も開きました。他社からも協業の話をもらっていますし、良い取り組みなので少しずつでも広げていきたい。

 もう一つは新しい試みで、ワールドの東京本社ビル1階を使ったイベント販売です。ミュージシャンなどクリエイター10人に国立の倉庫に来てもらい、5000ブランド、30万点の中からそれぞれの目利きで商品を選んでもらい、先日、展示販売をしました。

 30万点もあると我々の通常店で表現できるのはほんの一部で、お客の目に触れないものがほとんど。良いブランドがたくさんあって知ってもらいたいのですが難しいです。元よりお客さんは、今人気のブランドに目が行きがち。そこで影響力のあるクリエイターに独自の目線で選んでもらい、別の角度から商品を紹介しようという企画です。

 開催までは色々大変でしたが、非常に好評で、結果的には埋もれていた商品をユニークな形で見てもらえ、クリエイターを通じて古着に触れたことのなかった人への認知も進んだので目的はかないました。そのままキャットストリートの店に足を運んでくれた方もいらしたようです。

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(繊研新聞本紙22年11月30日付)

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