マッシュグループは、自社の原料調達~生産工程と流通過程におけるCO2(二酸化炭素)削減に取り組む。マッシュホールディングスと傘下のマッシュスタイルラボ、マッシュビューティーラボ、マッシュライフラボそれぞれに「サステナブル推進委員会」を立ち上げる。マッシュスタイルラボが取引先の商社、資材メーカー、包材メーカーとアライアンスを組み、サプライチェーンで発生するCO2の排出量を独自に試算し、削減目標を設定、商品のタグでの表示などを通じてアライアンスの活動や取り組みの進捗(しんちょく)を消費者に伝えていく。
サプライチェーン全体で
推進委員会は2月、ホールディングスと傘下の3社に設置した。このうち、服を中心にファッションを販売するマッシュスタイルラボは原料調達から商品の製造までの工程で取引先の商社6社と、商品の出荷から店舗、ECでの販売までの流通過程で包材と資材関連の取引先4社とアライアンスを組んだ。
グループ内でも、原料の調達や製造を担う商社や包材、資材関連の取引先もそれぞれにサステイナビリティー(持続可能性)にかかわる取り組みは強化してきた。今後はアライアンスで目標を設定、実践、取り組みの評価を行い、サプライチェーン全体で目標に対しての進捗を消費者に対して情報開示する。
オーガニックやリサイクルなどトレーサビリティー(履歴管理)が確保されたサステイナブルな原料開発や、回収~循環の仕組み作りも行うが、もっとも重視するのがサプライチェーン全体でのCO2排出量の削減を進め、カーボンニュートラルに少しでも近づく取り組みだ。
ファッション業界が排出するCO2量は世界の排出量の7%とも10%とも言われており、地球温暖化抑制に向け、削減する必要がある。マッシュホールディングスの近藤広幸社長は「排出量が仮に全体の7%としたら、当社のビジネスで生じる排出量を最低でも半分の3.5%に減らしたい」とする。
本気度はアライアンスとの取引規模からうかがえる。商社の田村駒、豊田通商グループ、豊島、モリリン、三菱商事ファッション、スタイレム瀧定大阪の6社は、マッシュスタイルラボが販売する商品のおよそ半分を担う。ザ・パック、東京アートからは包材の8割を調達し、三景、ヴェストからは下げ札や織りネームのほぼ全量を調達している。
活動内容を消費者に開示
アライアンスは月1、2回の情報交換や専門家を招いた勉強会などを通じて、ゴールを設定、共有し、実行する。マッシュスタイルラボの全ブランドに適用する原料の使用基準や工場監査の独自基準を設定し、省エネや再生可能エネルギーへの切り替えなどをアライアンスがサプライチェーン全体で進めていく。
当面はマッシュスタイルラボの販売する商品の中でよく売れていて、取引先への発注量が多い商品を選定し、原料調達、製造、配送、販売までの流れでどれだけのエネルギーを使っているかをトレースし、消費者の手に商品が渡るまでの全プロセスで使うエネルギーを算出、各段階で削減する方法を議論する考えだ。
実際に削減に着手する際は、商社6社、包材と資材の4社それぞれが自社の取り組みの事例や方法を互いに出し合い、共有し、取り組むという。こうした活動の内容は、マッシュスタイルラボが販売するブランドの全商品にタグをつけ、QRコードなどで読み込めば、専用のサイト経由で購入者がチェックできるようにもする。
近藤社長に聞く 「今取り組まないと未来守れない」
SDGs(持続可能な開発目標)に取り組んではいるが、環境問題に関してもっとも切実なのは温室効果ガス増加による気温上昇を止めることだと思っている。30年、50年に向けた削減目標は設定されているが、真剣に取り組まないと未来の子供の笑顔は守れないんじゃないか。かなり強い危機感がある。
けっこう危ない状況なのにまだ取り組みは十分とは言えない。それを変えるのはファッションの仕事だと思う。CO2削減にチャレンジして、工夫して、前向きに新しい経済活動にシフトして、なおかつファッションの楽しさも提供することにも本気という我々の姿勢をお客様に見せ、それを広げて世の中のムードを変えたい。
アライアンスを組む取引先の商社は互いにライバルだし、情報交換も本当に大変だと思うが、皆さん協力してくれることになった。CO2削減について本気で話し合い、ゴールを共有し、サプライチェーンの全てで取り組めば、スピード感も上がる。
今春からスタートの新ブランド「ミースロエ」を皮切りに、当社は全ブランドの商品タグにQRコードを付けて、どのように環境問題に対してコミットしているかをお客様に伝える取り組みを広げていく。CO2削減に関するアライアンスのアプローチも伝えて、地球に対する安全表示を品質表示と同じくらい必須なものにしたい。
まずは当社が削減に取り組み、成果を上げることで先行事例を作る。その進捗や成果はできることからどんどん開示する。それが当社だけでなく、いろんなメーカーや小売業も取り入れて、業界全体に動きが広がって日本のファッション企業ならどこも普通にやることになっていけば良いと考えている。
(繊研新聞本紙21年3月29日付)