アバンティはオーガニックコットンブランド「プリスティン」でエコでサステイナブル(持続可能)なブランド運営を進化させ続けている。土から育て、作り、再生し、土に返す循環型の仕組みづくりを進めている。
廃棄物ゼロを目指す
プリスティンはオーガニックコットン100%で無染色が基本の、人にも環境にも優しい土に返る素材を使用している。さらにサステイナビリティー(持続可能性)を進めるため30年にはゼロウェイスト(廃棄物ゼロ)を目指す先進的な取り組みをしている。昨年秋には同社がエシカル、サステイナビリティーを推進する循環型の仕組みづくり全体を「ラブオールアクション」と名付け、「人に、社会に、環境にやさしいものづくり」をアピールしている。
4年前に本格化した再生の取り組みが「リコットンプロジェクト」だ。同社の協力工場の協力を得て生産過程で出た残糸、残布を回収して製品にする施策で、糸から生地に仕上げ、アパレルや雑貨に製品化する。このほか、再生木綿紙にも生まれ変わらせ、同社製品のタグや絵はがき、カレンダーとして商品化している。
21年には再生木綿紙を利用したトルソーを開発し、石油由来の樹脂製トルソーから土に返るトルソーへの転換を進めてきた。木綿紙トルソーは水などに弱いため、臀部(でんぶ)の皮膚や肉を切り取るミュールジングを行っていない羊からとったウールのシートでカバーしたもので、他社への販売も行っている。
使用済み自社製品回収
さらにゼロウェイストを推進するため、使用済み自社製品の回収にも力を入れている。22年9月からは毎月20日を「リプリデイ」として各店舗で回収する態勢を強めた。生地や紙に再生したり、製品の植物染料による染め直しやリメイクなども実施し、アップサイクルや長く着用してもらうサービスも行っている。
プリスティンは無染色で自然のままに綿を使うことが基本だが、染めにも力を入れている。化学染料ではなく草木染で、色むらのあるナチュラルな風合いを生かした京都の〝京捺染〟によるプリント製品も今春に提案した。
土から育てるための「国産綿復活プロジェクト」にも取り組んでいる。綿花の有機栽培は以前から進めてきたが、21年に有機綿花栽培のネットワーク「アバンティコットン倶楽部」を設け、全国に栽培する生産者農家の協力を得て収穫を増やすことにした。現在、24拠点で有機綿花を栽培しており、今年1月には栽培して収穫した綿を使用したパジャマなどのセット「着衣初め」(きそはじめ)を初めて販売した。綿花の種から採れる綿実油を使ったツナ缶やキャンドルをセットにした。昨年は345キロを収穫、23年は850キロの収穫を目指し、30年には2000キロというプリスティンの全製品に混率2%として使用できる収穫量を目標にしている。同社では障害者を雇用する福祉作業所を活用してきたが、国産綿のわた繰りの作業や、回収した使用済み製品のパーツ分けの作業も、福祉作業所に依頼している。
インドで生産した原綿を含め、手摘みでの収穫がほとんどだが、手作業によるため原綿に異繊維が購入するコンタミネーションが発生することがある。コンタミが見つかると廃棄されることが多いが、同社では手作りした綿を無駄にしないためにもコンタミ製品も販売可能にし、購入客にも考えを伝えていく。
同社は「土に生まれ、土に返る」という考え方を大事にしている。衣服も食品も同じく土で育つことから「衣食同源プロジェクト」を進めている。「まとう、いただくを同じ畑から生み出そうという取り組みだ。オーガニックコットンの協力農家による有機栽培の野菜や果物、加工食品などを直営路面店などで販売しており、今年、4月には伊勢丹新宿本店の期間限定店でプリスティンとともに有機栽培の野菜や果物、花を販売した。
包装袋、ハンガー、什器などでも生分解性や循環性のある素材に転換し、ゼロウェイストを目指す。ファンとの接点も重視していく。以前は同社のオーガニック農園などを備えた「小諸エコビレッジ」へのツアーを組むなどファンとつながるイベントなどを実施していたが、この間、コロナ下でイベントなどは控えてきた。コロナ沈静化も見据え、今後は綿花の種まきイベントなどプリスティンの考え方と共有できる取り組みを強めていく方向だ。同社はオーガニックコットンを通じてサステイナブルな事業を進めてきたが、今後は衣食などトータルに大地から育て、作り、再生し、土に返るをシームレスにつなぐ事業を広げていく。
(繊研新聞本紙23年4月26日付)