【ファッションとサステイナビリティー】ステークホルダーに聞く 新たな産業の近代化 丸久社長 平石公宣氏

2019/12/08 00:00 更新


平石社長

オール日本で海外生産に対抗

賃上げ、コストアップ、デジタル化で吸収する

 当社は、工場を持っている商社のような企業です。バングラデシュとタイにも工場を持っていますが、最近は日本の小売業向けが不振のため、海外を伸ばそうとしています。バングラデシュはH&Mとザラの拠点ですが、彼らの工場とは規模、仕組みが日本とはあまりに違い、今の日本では欧米に通用しないと痛感しています。生産人口は500万人。ミャンマーは20万人しかいませんし、人権侵害をしていますから、ヨーロッパと戦うならバングラデシュしかないと思っています。

 サステイナブル経営には従業員や顧客、取引先、地域社会といったステークホルダーに対して適切に関わりながら「持続的に経営を続けていく」という意味もあります。バングラデシュでは1月に労働法が改正され、賃金が上がりました。私たちは合理化とデジタル化でコストアップ分を吸収し、収益性と競争力を高めることにしました。

 延反機4台とCAM(コンピューターによる生産)2台を導入し、縫製ラインはICタグを導入して工員ごとの生産の進行状況を把握できるようにしました。また「経営改革APプラス」を入れて糸や生地、付属などの管理状況を可視化し、丸久の国内外の工場を連動させました。今後はハンガーシステムやオートメーション化を進めていかないと世界には勝てません。

 日本のアパレルメーカーは「隣より安ければいい」としか考えていないような気がします。デジタルに投資していないから、生産状況などを把握していない。この前、海外の中堅外注工場を見てきましたが、デジタル機器が並んでいてびっくりしました。対して日本は、もうオールジャパンで対抗しないとかなわないのではないでしょうか。

 別の分野でも貢献しようとしています。2年前、農業ビジネスを立ち上げました。バングラデシュは豊富な農産物の生産国ですが、加工技術が乏しく、廃棄処分される量がたくさんあったのです。サツマイモを何とか事業化する計画ですが、まだ時間がかかりそう。でも地道に進めていきます。

(繊研新聞本紙19年12月4日付)

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