【ファッションECサミットin福岡】デジタルとリアル一体駆使を

2019/12/08 06:30 更新


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 繊研新聞社は10月、第4回「ファッションECサミット」を福岡・博多で開いた。パネルディスカッションや注目サービスのセミナーを行い、福岡のアパレル関係者約80人が参加した。要旨を紹介する。

どう描く?直営ECの顧客作りと購買体験

【登壇者】

  • ナノ・ユニバース 経営企画本部WEB戦略部長 越智将平氏
  • 東京ソワール 総合企画室ウェブ推進グループマネージャー 望月知子氏
  • ケイトスペードジャパン Eコマースアソシエートディレクター 国分純子氏
  • ミスアイディ MOCAリテールプランニング部サブセクションチーフ 山下実樹氏
越智氏、望月氏、国分氏、山下氏

 パネルディスカッションのテーマは、「直営ECだからこその顧客作り、顧客体験をどう高めるか」。大手セレクトのナノ・ユニバース、フォーマルの東京ソワール、バッグのケイトスペードジャパン、福岡発EC専業レディスアパレルのミスアイディのEC担当者が登壇した。

 まず、EC市場を取り巻く状況について意見交換した。EC売上高について越智氏は、「ECモールは頭打ちになりつつあり、直営ECで限られたパイをどう奪っていくかが問われる。そのためには店舗の価値を再発見することがカギになる」と話した。全社売上高が減収の一方で自社ECの売上高は成長している企業が多くみられることに対して望月氏は、「当社としては市場の成長が見込めないなかで、ECでどう活路を見いだすか。リアルとECは顧客層が異なり、EC化率が高まることへの危惧は少ない」とした。山下氏はECモールを「自社ECへ誘客する起点になっている」、国分氏は自社ECを「売り上げありきでなく、デジタル顧客体験の向上させるためのもの」とした。

左から望月氏、山下氏、国分氏、越智氏

 次に、各社の直営ECの役割やKPI(重要経営指標)を聞いた。基本のKPIは売上高と購入に至るまでどのようなルートをたどったかとしつつ、「LTV(顧客生涯満足度)を見て個客とじっくり向き合う」(国分氏)、「商材の性質上、新規客よりもリピート購入を重視」(望月氏)、「ファーストインプレッションで興味を持ってもらえる商品スタイリング画像と欠品防止」(山下氏)、「店舗でのアプリダウンロード(DL)率、DL後のプロフィル登録率、登録後のリピート購入率」(越智氏)とした。

 「アプリは有効か」の話題に越智氏は、「125万DLされ、EC売上高に占めるアプリ経由売上高の割合は45%」、国分氏は「12万DLでアプリ経由売上高は10%ほどだが、アプリでは商品のカスタムニーズが高い」とした。両者とも「アプリは非常に重要なツール」と強調した。

越智氏

 アプリはブラウザーより表示速度が速く、プッシュ通知などで再来店を促したり、CVR(購入率)が高くなりやすい。「年間2億円以上のEC売上高があるところはアプリに取り組んでもすぐに減価償却できる」(越智氏)とした。DLしてもらうためにもコストがかかるが、「販売員がDLを勧めるなど実店舗が大いに貢献している」(同)という。

 「お客とコミュニケーションをどう取るか」のテーマでは、山下氏はSNSの活用事例を紹介した。週1回、インスタグラムで新作アイテムをライブ配信している。モデル役と商品説明する社員の2人1組でリアルな着用感などを伝えることで、DMなどでの問い合わせが多い。「身長150センチだとどれくれいの丈感になりますか」といったDMには、最も体形が近い社員が着用した画像を添付して返信しているという。

山下氏

 望月氏は、ECでも会員登録してもらえば、「気になる商品を2サイズ・色違いで試着できるサービスを提供している」。また会員の誕生日月には手書きメッセージを添えたバースデークーポンを送付しており、「中心顧客の40代女性にかなり喜んでいただける」という。

望月氏

 「実店舗との連動」の重要性も高まっている。国分氏は「店舗スタッフがECの施策を実感できる施策」を進めている。ECでキーワードを発表し、店頭でそれを伝えるとプレゼントがもらえるキャンペーンなどを、EC、PR、マーケティング、MDなどの部署の担当者が集まって考えている。

国分氏

 越智氏は「店長アンケートなどで現場の声をECに生かしている」と語った。たとえば、商品画像のスクリーンショットを持参して店に来店する客が多いが「品番がわからずに困っている」という声に対しては、アプリでスクリーンショットを撮影した際に品番と商品名を記載して保存できる仕様に改善した。

 最後に、「ECに注力することで見えてきたこと」について語ってもらった。山下氏は「変化が早い業界のため、ECに取り組むことで時代に追いつける」と話す。また実店舗を持たないことで、「期間限定店での集客力が高まっている」とした。

 国分氏は「ウェブで下見して来店することが前提になっており、ECがないと商売が成り立たない」とする。実店舗にあってECに登録されていない商品があると、「エリアマネジャーから早くECに載せてくれと要望がくるほど」だ。

第4回「ファッションECサミット」

 越智氏はECというチャネルの在り方が変わってきていると指摘。「ECの消化率の高さから、在庫消化の場がアウトレットからECに移ってるところがあるが、ECでセールを乱発することはブランド毀損(きそん)に直結する」と警鐘を鳴らす。消費増税後、ECモールの売上高はダウンしても自社ECは横ばいを維持しており、「改めて直営ECはファンありきの商売だと実感した」と話す。

 望月氏は「自社EC8割、ECモール2割の売り上げ構成比だが、どちらも価格訴求はしないようにしている」と語った。

ヤプリ×SHIBUYA109エンタテイメント アプリはOMOのハブ

【登壇者】

  • SHIBUYA109エンタテイメント オムニチャネル事業部MDプランニング部長兼SHIBUYA109総支配人 沢辺亮氏
  • ヤプリ 執行役員兼CCO(チーフコミュニケーションオフィサー) 金子洋平氏
沢辺氏、金子氏

 アプリがECやオムニチャネルに必要不可欠になっている。このセッションでは、アプリ運営プラットフォーム「ヤプリ」の金子洋平氏がコーディネーターとなり、SHIBUYA109エンタテイメントの沢辺亮氏に「これまでのオムニチャネル施策とこれからのOMO(オンラインとオフラインの融合)戦略」について聞いた。

 「渋谷109にとってECとは」の質問に沢辺氏は、「地方の人のために04年に開始した。109の売上高は08年にピークだったが、ECは右肩上がりで全社売り上げに貢献した」と話す。最近ではオムニチャネル化を進めるため、館内にECで注文した商品を受け取れるカウンターを作った。月に200~300件という想定以上の利用があり、利用者の約半分が館内で別の買い物をしているという結果がでている。「ECは若い女性との接点という意味でも欠かせない」とする。

前方左が金子氏、右が沢辺氏

 「SNSの位置づけ」については、「お客とのコミュニケーションツール」と強調した。SNSチームを結成し、権限を委譲された担当者が自ら社内外からネタを拾い、「フォロワーにメリットがある投稿を最優先にしている」という。時には芸能人のアカウントにも絡んだり、土日にも情報発信したりしている。

 「アプリはOMOのハブになるのか」の問いには、「なる」と回答。「導入コストが下がってきていたのでアプリに着手した。しっかり訴求すればすぐに10万ダウンロードされたし、アプリ経由のCVR(購入率)も高い」とした。アプリ開発などのインフラ整備には「自社でやるには限界があり、ベンダーと共創するという考え方」で取り組んでいる。

 「注目するテクノロジー」は、「リアルでの体験価値を高められるツール」を挙げた。ビーコンやカメラなで実店舗の顧客の行動データを取得し、ECやアプリのデータを連携していきたい考えだ。

 「これからの渋谷109」は、「若者の夢や願いをかなえる場所として、109に来ることが常に楽しいと思ってもらいたい」。ファッションやフード、エンタメなど、若者の興味関心をキャッチして、可変的な館にしていくという。ECについては「勝ち負けがはっきりしてくるだろう。ファッション+エンタメECとして差別化していきたい」と語った。

●注目サービスプレゼンテーション

注目企業が登壇したプレゼンリレーの様子は下記からダウンロード可能です。

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ダウンロードはこちらから

(繊研新聞本紙19年11月25日付)


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