ファッションやライフスタイルの分野で、海外から日本への越境ECサイトが存在感を増している。高付加価値の魅力あるブランドを集め、多国籍にサイトを展開。ECのノウハウに長じ、日本向けでも、国内の有力PR会社と契約し販促に力を入れている。欧州からは、2月1日のEPA(経済連携協定)発効を機に、本格的に日本サイトをローンチするケースもあり、今後も競合が増えそうだ。来日した本国の関係者に、サイト運営の工夫や日本市場への期待を聞いた。
(中村維)
エッセンスはカナダ、モントリオールに拠点を持ち、ハイファッションに特化したセレクト型ECサイト「エッセンス」(https://www.ssense.com/ja-jp)を運営している。16年には日本語サイトを開設。現在、英語、フランス語、簡体字中国語で展開し、1カ月あたりのページビューは7600万で、訪問者数は1800万人。サイト開設以来、売り上げは毎年、前年比2ケタ増の伸びを続ける。18年末時点で社員数600人を抱える成長企業だ。サイト最大の特徴となっているのが、ファッションやカルチャーに関する豊富な読み物コンテンツ。来日したコミュニケーションディレクターのディアナ・チョウさんに、サイト運営の工夫や、コンテンツ作りのポイントを尋ねた。
服を売るだけでなく
――創業は。
エッセンスは、03年に大学を卒業したばかりのラミ・アタラCEO(最高経営責任者)をはじめとする3兄弟が起業しました。「服を売るだけでなく、カルチャーを発信するサイトにしたい」との思いで、編集コンテンツを擁するスタイルになっています。ファッションがカルチャーの中でどうあるべきか、互いにどう影響を与えているかを伝えたいと考えています。
――編集体制は。
16人が所属するチームが、編集企画を担当。EC用ビジュアルは70人超の別部隊で撮影しています。本社内には13のスタジオがあり、1週間で平均1400ルックをアップ。納品からアップまで4日間で完了します。編集コンテンツは週に5本程度更新し、原稿は、ウォールストリートジャーナルやニューヨークタイムズにも寄稿しているような外部ライターにも依頼。編集コンテンツから入ってくる訪問者の平均滞在時間は8分5秒と、ショップから入ってくる訪問者の滞在時間6分と比べて長い傾向にあり、ロイヤルカスタマーの獲得に良い影響を与えています。
日本からも買い付け
――バイイングについて。
バイイングおよびマーチャンダイズプランニングチームには、現在38人が所属。商品は全て買い取りで、扱いブランド数は400以上、販売アイテム数は2万点以上。日本からも「フミト・ガンリュウ」などを買い付けています。
顧客は女性が49%、男性が51%、そして77%が18~34歳までのミレニアル世代となっています。扱いブランドはストリートからラグジュアリーまで幅広いのですが、エッセンスのお客様が買えるスタイルと値段に絞ってセレクトしています。
――実店舗をオープンした。
昨年、モントリオールに開きました。オンラインとオフラインをつなぐ場として、編集コンテンツと関連したエキシビジョンを開いたり、予約したECの商品を試着することもできます。ヴァージル・アブローが来て、ショップ内のスタジオで制作・販売するイベントも開きました。ブックショップとカフェも併設。モントリオールは観光客も多いので、遠方からアポイントを取って試着に来られる方もいるんですよ。
(繊研新聞本紙年2月6日付)