「エクボ・クローク」 カフェや店舗をロッカー代わりに

2019/05/14 06:27 更新


 カフェやショップをロッカー代わりに――荷物を預けたい個人と一時的に預かる店舗をアプリで結びつけるサービス「エクボ・クローク」を提供するエクボ(東京、工藤慎一社長)の事業が急拡大している。国内外の旅行客が増え続けるなかコインロッカーが不足し、追い風が吹く。少額だが日銭が入り、来店促進につながることもあって導入店舗にメリットがある。今後も国際イベントが目白押しで、同社は導入店舗の開拓を急いでいる。

(永松浩介)

インバウンド対策に

 創業は17年1月。16年の夏ごろ、ウーバー・ジャパンでインターンをしていた工藤社長が、渋谷で荷物の預かり場を探していた外国人観光客に声をかけられたのがきっかけだ。30分以上一緒に探したが見つからず、ひと休みしようとカフェに入った時に思いついたという。

 市場調査に3カ月以上費やし、事業が成り立つと判断、サービスに参加するショップや飲食店に営業をかけ、カフェ中心に約100店で始めた。18年夏にはプロサッカー選手、本田圭佑氏の個人ファンドから出資を受けた。

 約2年で導入店舗は1000を超え、現在では47都道府県全てに利用可能な店がある。荷物の最大辺が45センチ未満で1日当たり税込み300円、45センチ以上600円が基本。アプリで、ホテルの予約のように利用エリアや個数を入れて受け入れ可能な店舗を探し、予約時に決済する。利用者の7割が外国人で、「インバウンド(訪日外国人)対策の最初の一歩として導入してもらえば」という。アプリとチャットサービスで3言語対応している。

 店側は預かり可能な個数などをあらかじめウェブの管理画面に入力しておけば、現場で預かれないといった問題は起きない。預ける際には荷物の写真を撮影し、店とユーザーが共有することで受け取り時のトラブルを防げる。導入コストはほぼゼロ。サービス利用料の50%が店側の取り分で、残りのうち保険料や決済手数料を引いたのがエクボの運営資金となる。

必ず2回は足運ぶ

 現在は、カフェを中心に不動産賃貸仲介チェーンやカラオケ店、JR東日本、西日本の駅構内外の店、首都圏の郵便局30余りなど多様。西武渋谷店やマルイの上野店、難波店など大型商業施設も参加している。マルイ有楽町店もサービスを始めた。

 店にとって大きなメリットは、預ける時と受け取る時に少なくとも2回、ユーザーが足を運ぶ点にある。ついで買いやサービス利用が期待できる。

 外国の要人の来日時や東京五輪などの国際イベント時には、テロ対策としてコインロッカーが使えなくなるケースもあるため、さらにサービスへの需要は高まりそう。海外での事業も視野に入れており、25年までに世界500都市でのサービスを目指している。

多様な店舗が導入(西武渋谷店)


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