叫び―国内縫製業の現場から④自助努力

2017/01/01 06:07 更新


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「工賃上げて」だけでは駄目


 工賃が上がらない、後継者がいない――。そう嘆く縫製工場だが、同時に、この現状を招いた責任についての反省も聞かれる。まだ生産が中国に移転する前に、「もっと、できたことがあったのではないか」。仕事の依頼が消える中で、過去の自助努力を問う日々が続く。


努力不足への反省

 高度経済成長期が終わった70年代半ばから90年代初めにかけて、生産の中国移転が始まる前までは、まだまだ利益を上げていた工場は多かった。90年代半ば以降になると、縫製は斜陽と言われ始めたが、ある経営者は「借金はあったが、それでも飲み歩く余裕があった」と話す。この頃を冷静に振り返ると、「工賃なりの仕事しか、していなかった」という反省がある。今、毎月の採算がギリギリの状況を繰り返す中で、気づいたことでもある。

 別の工場も「昔は働きかけなくても仕事がたくさん舞い込んできた。だから、営業をしてこなかった」と話す。それが今の縫製工場の営業力不足を招いているという。安易に海外生産に手を出してしまい、結局はうまくいかず、撤退。日本での物作りをおろそかにし、取り返しがつかなくなったケースもある。

 「もっと技術を磨いておけば」「付加価値の高い物作りを追求しておけば」「なぜ日本人を育ててこなかったんだ…」。 こう悔やむ工場は多い。


仕事を回したいが…

 アパレルメーカーも手厳しい。創業以来、国内生産を貫くメンズアパレルメーカーは、「工賃をあげてくれと言うだけでは駄目」と言い切る。「どういう物作りができるようになれば、工賃を上げてもらえるのか。それを考えないといけない。しかし、今は工夫すらない」。コンスタントに仕事を出し、工賃も他のアパレルに先駆けてわずかだが引き上げた。にもかかわらず、他に良い条件の仕事が来たらすぐに飛びつき、仕事が無くなると泣きついてくる。「工場もわがまま」と指摘する。

 国産比率の高い専門店向けレディスアパレルは、「365日、縫製工場とは取り組むつもりでやっている」と話す。しかし、市況は厳しい。展示会をしても先物の発注はつかない。昨冬以降、顕著に服が売れず、バイヤーの買い控えが目立つ。だから工場へ発注が出せない。このアパレルの業績も厳しい。少し前には赤字も出した。それでも「工場が一番辛いのは閑散期。だから、なんとか仕事を回してあげたいが、なかなか難しい」と声を落とす。

 縫製工場に寄り添い、励ますアパレル。工場を下請けとしか扱わない企業がある一方で、真摯(しんし)に受け止めたい存在がある。

(繊研 2016/11/18 日付 19593 号 1 面)

 生産の海外移転と低工賃、人手不足と後継者難…。国内縫製業は限界に近づいている。その課題と展望について取材した。この連載へのご意見・ご感想を、housei@senken.co.jpまでお寄せください。


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