デジタルプリントの可能性(IFFセミナーから)

2013/07/25 16:53 更新


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 短納期で小ロット生産に適し、鮮やかで繊細な表現も可能なインクジェット機を使ったデジタルプリント。世界で最も普及が進むイタリアのコモ地区や新興国での導入状況、国内の現状や技術的課題について、テキスタイルデザイナーの梶原加奈子さん、コニカミノルタの大野彰得さん、セイコーエプソンの北原強さんが語った。

 梶原 インクジェットプリントとは17年の付き合いで、プリントデザインに積極的に活用してきた。技術が進化し表現できることも増えている。

 大野 産業向けに注力しインクジェットプリンターを開発してきた。布地にプリントしファッション業界に向けて提案したところ、着分やマス見本がその場でできることに大きな注目が集まった。最近の広がりの状況を見ると、いよいよ待ちに待った日が来たと感じている。

 北原 インクジェットプリンターのプリントヘッド開発に取り組んできた。インクジェットはインキやカートリッジ、画像処理など周辺技術も重要だ。イタリアの機械メーカーであるロブステリらと共同でデジタルプリントシステム「モナリザ」を開発し、日本でも2年前からエプソン京都デジタル捺染センターを開設し普及に努めている。アナログ捺染がデジタルにシフトする日が来るのではないか。

 梶原 イタリアのインクジェットプリントは柄が美しく鮮やかに表現されている。一方、日本はここ数年で技術開発が進んだがプリントできる素材が限られ、プリント後の風合いが硬くなるなど課題も多い。ただ、インクジェットを使う企業やブランドも増え、リアルなツイード柄や、エスニックな花柄やパネル柄を組み合わせた複雑なプリントも出ている。インクジェットプリントの進化が新たなトレンドを作っている。

 北原 イタリアのコモ地区はインクジェット機の導入企業が数多く集中し、高級ブランドからファストファッション向けまで幅広く生産している。現在イタリアは、デジタル化率が約30%に達しているが、特にコモ地区は短納期や小ロットなどインクジェットの利点と共に、自身のブランド力やデザイン力も徹底的に活用してきた。前処理などで使う薬剤の開発に長けている企業やデジタルプリントを学問にする大学もあり、技術を発展させている。

 大野 現在、世界全体のプリント生地のうち、インクジェットプリントのシェアは0.5%程度だが、中国でさらに導入が進めば、数年でシェアは5倍から10倍になるだろう。デジタルプリントは技術の蓄積による使いこなし方も重要で、イタリアでも長い時間をかけ競争力を高めた。使い方次第で独自性や個性も表現することが可能だ。

 梶原 プリントした素材の裏側が白くなってしまう点はインクジェットの課題だ。海外は浸透性が高く生地の裏側まで鮮やかに柄が出ている。インキについても彩度や発色性、色の微妙な差異を追求することが重要だ。

 大野 素材の裏側もインキが滲まず鮮明にプリントするのは技術的には非常に難しいが、これが大きなノウハウになる。先進的なデザイナーの要望は技術を高める上で重要だ。今後インクジェットが普及する上で、メーカーがインキから機械まで供給する仕組みと、インキや機械を別々の企業が開発し供給する仕組みが考えられる。インキ専業の企業は、インキ開発に優れているが、インクジェットに適したインキ開発に優れているわけではない。発色性や堅牢度などの課題もあるが、2つの仕組みが互いに共存して発展するだろう。

 北原 インクジェットのインキは、シアン、マゼンタ、イエローの3原色を組み合わせて作るため、特に黒の発色はなかなか難しい。3原色を均一に浸透させるための前処理が非常に重要だ。リアルな組織柄や写真のような柄をコットンの上にプリントでき、ものづくりに役立ててもらいたい。


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