デザイナーコレクション総括

2019/10/17 06:00 更新


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ニューヨーク、ロンドン、ミラノ、パリのサーキットを終えたコレクションチームの小笠原拓郎編集委員と青木規子記者の2人に今シーズンの総括をしてもらった。

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ー全体の印象から。

小笠原 数年ぶりに大きくトレンドが変化したシーズンだった。

青木 ほんとですね。

小笠原 毎回少しずつトレンドは変わるんだけど、何回に一回ガラッと変わる時があるんだけど、今回がそのタイミングだった。

青木 ですね。

小笠原 この間の6、7年はデコラティブとか色柄ミックスというワードで語られるトレンドがあったんだけど、その装飾がすっかりなくなった。とてもシンプルな方向、新しいトレンドが出始めた。

ーエレガンスという意味ではない?

小笠原 前シーズンの時も言ったけど、エレガンスの方向には全体に行ってるのは間違いない。前シーズンも、ちょこちょこ出てた「スポーツスタイル」みたいなのがすごく減って、全体にエレガントになった。あんなにシンプルなラインがトレンドになったのは、ここ数年で初めてではないかな。ずいぶん長く出ていない。

青木 この1、2年、消費者が色や柄を着るようになって、多くの人にとって抵抗のないスタイルになった。それが行き渡ったなか、「シンプリシティ」≒シンプルなスタイルが出てきた。無地だったり、ワントーンだったり、装飾的なものを削ぎ落とす。それらをわかりやすくやったのがプラダです。シンプルだけどインパクトがあるラインでした。

ー面白くないわけではない?

小笠原 びっくりするぐらいシンプルだから、んー、面白いかと言われれば軽々には言えないけど、久しぶりに見たから新鮮ではあったな。


ーなるほど。

小笠原 ニューヨークから始まっているんだけど、トム・フォードが、「安らぎ」とか「くつろぎ」という言葉を使って説明していて、「えー」と思ってたら、シモーネ・ロシャが藁の格好をするお祭りがインスピレーションの素朴なものを出してびっくりしていたら、「プラダ」もすごくシンプルになっていた。「本当にこの流れに行くのか」と思ったら、「グッチ」も...。

青木 柄がかなり減っていました。これまでのグッチと違って、柄がぐっと減って、レイヤリング(重ね着)もしなくなった。柄と柄を合わせたレイヤリングは、このブランドを象徴するスタイルだったのに。もちろん、全くなくなったわけではないですけど、かなり減りました。

ー飽きた?

小笠原 そうだろうね。

青木 でも、それはネガティブな事ではなくて、頂点まで行ききったら別の方向に振れるのがファッションですから。

小笠原 インスタ映えするファッションに対する反動があるかもね。結局、この間売れているものは「映える」ものじゃん。グッチも「バレンシアガ」もロゴの入ったものを出して、装飾もこれでもかというぐらい入って、すごくアイキャッチだった。それを大丈夫?っていうぐらい思いっきりミニマルにした。そのあたり、セミナーでもっと突っ込んでお話しようと思ってるんだけどね。

青木 ここまでシンプルになると、素材の柔らかさとか、肌触りとか、色のトーンの微妙なさじ加減がすごく大事になってきますね。デザイナーのセンスが問われる事になります。


ーこれは売りやすい?

小笠原 わからんね。

青木 バイヤーは売りやすいと言っています。装飾が過ぎる服はインスタには映えるし、キャッチーかも知れませがん、客の幅は狭まります。それに対して、シンプルな服は客を選ばないというか普通の人も受け入れやすい。トレンドの一つとして、ビンテージやレトロなイメージの「70年代」というのが出ていて、それも着やすいものが多かったです。金ボタンの紺ブレ、デニムのミディスカートとか。

ービジネスに寄っている?

小笠原 だね。コンサバになっているから、コレクションとしては面白くない。自分が価値を感じる「新しい美」を追求しているデザイナーは数人かしかいない。シンプルな服づくりは、新しい美を探しているからだから。だけど、もう一方のコンサバティブなものは完全なビジネス優先。「フレンチシック」とか売れそうなものを作っている。

青木 ビジネスの部分として、店としては売りやすいですし、長く着られるものを販売できるというポジティブな評価もできます。

ーなるほどね。

青木 あと、テーマで言えば、「ビクトリアン」とかですかね。シンプルなデザインの中に、「ロココ」「エドワーディアン」などドレスの時代のエッセンスをアクセントとして取り入れていました。シンプルなアイテムにレッグオブマトンスリーブ(パフがなだらかにすぼまる袖)を取り入れたり、パニエ風に腰を膨らませたり。そのあたり、詳しいことはセミナーでお話しします!



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ーでは、今回のベスト3は。

青木 ひとつめは先ほど話題にしたプラダです。90年代っぽい懐かしさもありつつ、全く新しい美しさも感じられましたし。今シーズンの軸になるブランドの一つとして強いインパクトを残しました。もう一つは「ロエベ」。大きな変化があるブランドではないですが、心地いい雰囲気のなかに、クラシックやナチュラルといった今のエッセンスが散りばめられていて良かったです。

ロエベ

ーあと一つは。

青木 「パトゥ」。元は「ジャン・パトゥ」で100年ぐらいの歴史があるブランドをLVMHが買収して復活しました。デザイナーは「カルヴェン」や「ニナ・リッチ」のクリエイティブディレクターを手掛けてきたギヨーム・アンリ。トラディショナルなリアルクローズのなかに、彼らしい若々しいフレッシュさと繊細さを加えていて素敵なプレゼンテーションでした。いいスタートでしたよ。注目している日本のバイヤーも多く、次回も期待できそうです。

小笠原 「コムデギャルソン」と「ノワール・ケイ・ニノミヤ」「ヴァレンティノ」。

コムデギャルソン

ー川久保さんはジェンダーをテーマにしていた。

小笠原 でも、ジェンダーだけではなかった。もっと歴史を巡って過去から未来へ向かっていく、装飾の伝統的なエレガンスから服を抽象化して、かつて服だったもの、概念をどうやってつくろうとしているのか。そんなことを考えさせられたコレクションだった。しかも、それが今回で終わらず、12月にはウィーンのオペラ座でも発表するからね。ひょっとすると、ビジネス色が強く、保守的になっていくパリのプレタポルテに見切りをつけようと思っているのかな、とさえ考えたりする。新しい美を追求するようなブランドが減り、ビジネスツールになり下がりつつあるパリのプレタポルテは発表の場としては相応しくないと思っているのかもしれない。僕の想像に過ぎないんだけど。

ー逆に、そんな中で「私ぐらいは」みたいなところはない?

小笠原 それもあるかもしれないけどね。ただ、こっちがもうダメならあっちみたいな、それぐらいのビジネスセンスがある人だから邪推してしまうんだよね。それぐらいパリは閉塞感がある。

青木 多くの若いデザイナーがオフスケジュールでショーをやるのがパリだったのに、パリすらも閉塞感がありました。今シーズンは不景気の影響もあるのか、大手の力に支えられたブランド以外がほとんど出なくなった。出られなくなったのか、それとも出る意味を感じなくなったのか。前は有象無象がわしゃわしゃ出てきて新しいものを探せるような活気があったのに。対照的にミラノの底力を感じたシーズンでもありました。というのも、ファクトリーブランドが多いからでしょうか、自身のプレゼンテーションで意外な盛り上がりがあって。今振り返ると、それはそれで面白かったですね。

ー二宮啓さんは。

小笠原 これまで縫わないことでやってきた人で、ややもするとテクニックが凄いね、みたいな評価で終わっていた嫌いがあった。でも今回は、クラフトの技術を通してきちんとスタイルまで描けたかな。技術から、その先のスタイルまで見ることができて良かったと思う。

ーご苦労様でした。

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