ジーンズを担当して20年の繊研新聞記者が、方々で仕入れてきたジーンズ&デニムのマニアック過ぎる話を、出し惜しみせず書き連ねます。今回は、長く親しまれた加工に代わる最先端のテクノロジーについて―――。
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7、レーザーやオゾンで加工~人と環境に優しい最先端の技~
ジーンズは長くはき古したような雰囲気を出すために様々な加工を行うが、ストーンウオッシュをはじめ従来の加工方法では大量の水や化学薬品を使う。
米国のリーバイ・ストラウスによると水使用量の削減に取り組むまでは、ジーンズ1本あたりの加工に平均約42リットルの水を使っていたという。「世界全体のジーンズ生産で年間4億2000万トンの水を消費している」と指摘する欧州のジーンズメーカーもある。
そのためジーンズ業界では、水の代わりにオゾンを使った脱色や、レーザーによる加工などの新しい技術が取り入れられつつある。
水を使わない加工方法として広く用いられているのが、オゾンによる脱色。オゾンの酸化作用によって染料を分解し、脱色する。有害な脱色剤の残留や排出がなく、役目を終えたオゾンは分解され酸素となる。
岡山県にある大手ジーンズ加工場の豊和では、ブドウ糖によって脱色する技術を開発している。ブドウ糖の還元作用によってインディゴ染料を繊維から引き離すのだそうだ。
レーザー加工を採用するブランドも着実に増えている。イタリアの「リプレイ」はレーザー加工した商品群をまとめて、消費者に向けて打ち出している。
レーザー加工はレーザーで生地表面を焼き、はき古したような雰囲気を出したり、プリントのような柄を表現することができる。手作業の加工だと、商品によってバラツキが出るが、レーザー加工はコンピューターで制御するので均一な商品ができる。
最近流行しているジャージーのようなニットジーンズは、素材の特性上、穴をあけたりするダメージ加工ができない。レーザー加工なら素材へのダメージが少ないので、ニットジーンズで多く用いられている。
ジーンズの生地の表面を削って着古したような雰囲気を出すには、シェービング(機械による削り)やサンドブラスト(高圧で砂を生地に吹きつけて削る)などの方法が一般的に用いられている。
2010年に、H&Mとリーバイスが「サンドブラストを行うと、砂に含まれる結晶シリカが飛散し、作業員に健康被害をもたらす」として、サンドブラストで加工した商品を取り扱わないと宣言した。結晶シリカは発がん性があるとされ、トルコのジーンズ加工場で作業員がけい肺症になったという報道もあった。
こうした動きに対して、日本のあるジーンズメーカーからは「サンドブラストはさび取りや金属の研磨などに使われることが多く、金属加工業者にすれば不可欠の工程。危険性を理解した上で作業環境基準を守れば何の問題もない。コストを下げるために手抜きをするから問題が起きる。正確な情報を持たないで、危険だからやめるというのは理解できない。アパレル業界自身がもっと物作りの現場を知るべきだ」という厳しい指摘が出された。
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