環境省がこのほど東京で開いた「脱炭素経営フォーラム2019」。「サプライチェーンのマネージメントとエンゲージメント」分科会のパネリストに、染色整理加工業の艶金の墨勇志社長が繊維業界から参加、脱炭素経営の取り組みを紹介した。同フォーラムは脱炭素社会実現に向けた企業の実践や行動を促す目的で行われた。
紡績から縫製にいたる繊維業界の中で、染色加工段階が最も二酸化炭素排出量が多い。これは染める生地に水と染料を入れて温度を上げるなど大量のエネルギーを使うためだ。通常は重油や天然ガスを使うが、同社は木材チップを使ったバイオマスボイラーを1987年から使っている。木材は森林成長過程で二酸化炭素を取り込み、燃やすときに排出するので二酸化炭素の増減に影響しない(カーボンニュートラル)。
こうした経緯を受けて、環境省の「中小企業版の二酸化炭素排出量の査定、中長期二酸化炭素排出目標設定支援」事業に参加した。同社ではさらに電気使用量の削減や再生エネルギー使用などを進めればコスト削減に寄与し、さらに「注目されているサステイナブル(持続可能性)・環境配慮の流れに沿って企業価値が高まるのではないか、ひいてはそれがサプライチェーンでの積極採用、受注量の拡大に結びつくのではと考えた」という。
同社では「ボイラーの二酸化炭素排出量を比較するとバイオマスはLPガスの25%しかないことが推定できた」ともする。
これを受けてさらに年間二酸化炭素排出量削減を目指し、30年度には17年度比でさらに20%減らすとする。
さらに「中小企業に脱炭素経営は非常に有効である。繊維のような分業サプライチェーンで最終ユーザーから二酸化炭素削減を求められた場合、必ずサプライチェーン構成員は排出の少ない企業を選ぶ。それが企業の競争力を増す」と強調した。