カラーループ(京都市、内丸もと子CEO=最高経営責任者)は、廃棄衣料をアップサイクルする京都工芸繊維大学発のベンチャー。赤や青など色で大別した故繊維を樹脂やバージン糸と混ぜ、紙や成形品、再生糸にしている。「どんな色でも作れる」と内丸CEO。BtoB(企業間取引)が主で、アーバンリサーチとは創業時から協業しており、コクヨなどナショナルブランドとも取り組む。今年開催の大阪・関西万博には自社のボードを使ったベンチを納品する。
(永松浩介)
再生率の低さ知り再び大学へ
内丸CEOは英国の大学でテキスタイルデザインを学び、現地で働いた後、地元京都に戻りテキスタイルデザイナーとして繊維会社などで商品企画に携わっていた。ある時、繊維のリサイクル率の低さを知って驚き、学び直しのために京都工繊大の博士課程に11年に入学し、繊維リサイクルの研究を始めた。
繊維はアルミなど他の素材に比べ、リサイクル率が2~3割とかなり低い。全体の7割ほどが複数の素材で構成されていて分別が難しく、そもそも繊維リサイクルの法律もないため進みにくい。
研究は、デザイナーでありカラーコーディネーターでもある自身の経験を生かした。従来のリサイクルは古着としての流通以外には軍手やウエスなどが中心で、広がりは限定的。分別せずにわたにすると濁ったような色になるからだ。
もう一段の普及には魅力的な素材である必要があると考え、「色をベースにした繊維リサイクルシステムにたどり着いた」。学位も取得し、19年に研究を社会実装するために会社を設立した。

仕組みはこうだ。故繊維を組成を気にせず色で大別し、繊維を解してわたにする。糸にする物は反毛し、繊維の長さを残してバージン糸と混ぜて紡績する。ハンガーやボードなどはポリプロピレンなど熱可塑性樹脂で固めて成形する。
色は元々付いているから染色も脱色もしない。ない色は作る。例えば、紫の成形品を作る場合は赤と青を混ぜたわたを使うなど、量の配分など色の組み合わせを工夫したという。「ほとんどの色が作れる」ため、最終製品に必要な色味が決まってから故繊維を集める。サンプルから生産の仕組み整備など実装まで5年かかった。
競合はバージンマテリアル
現在の製品は薄いシート状の「リフィック」やフェルト、フェルトを積層したボード「テクスラム」、再生糸「リプリット」など。リフィックはブックカバーやトートバッグに、テクスラムは什器などに使える。積層構造なので厚みや密度、断面の意匠性など自由度が高いという。

故繊維率50%の紡績糸は、様々な素材の故繊維を使うことができる。「ミックス感がある」と評価される一方、生産量が少ないため、相対的に糸値が高くなるのが悩みだ。「競合はバージンマテリアル。もっと多くの企業に使ってもらって値段を下げたい」という。
現状、期待が高いのがテクスラムのボードだ。ホテルや店舗、家具メーカーなどからの問い合わせが増えている。内丸CEOは「大阪万博に納品するベンチもこれを使ったもの。万博で注目が集まれば」と話している。
