中国でコーヒーが熱い 10年で市場は60倍に(中国トレンドエクスプレス編集長・森下智史)

2023/10/24 12:30 更新


重慶のラッキンコーヒー(19年撮影)

 中国で今、コーヒーが熱い。「何を今さら」と言われるかもしれない。しかし、中国のコーヒー消費が新たな時代に入っていると言われているのである。その市場規模は23年には1800億元(約3兆6000億円)になると言われている。14年に30億元(600億円)前後だったことを鑑みれば、10年ほどで60倍になることになる。

ハンドドリップも浸透

 中国でコーヒーと言えば、かつては「三合一」と呼ばれるスティックタイプの粉末コーヒーで、ミルクと砂糖がたっぷり入ったものが主流だった。中国の都市部でハンドドリップコーヒーの店を見かけるようになったのは10年代を過ぎたころ。それも、中心は北京や上海といった一線都市の話だ。

 しかし、今やスターバックスやブルーボトルなどの欧米ブランドのほか、ラッキンコーヒー(瑞幸珈琲)やコッティ(庫廸)、マナーといった国産コーヒーブランドが登場し、二線、三線都市へと展開範囲を広げている。ラッキンコーヒーは財務の虚偽報告によってアメリカ市場で上場廃止されたが、見事な復活を見せたブランドである。

 こうしたブランドはマーケティングが巧みで、ラッキンも9月には白酒(中国蒸留酒)のトップブランド「茅台酒」とタイアップ。白酒風味のラテを販売し、各SNS上が同商品で埋め尽くされるといった現象にもなっている。

〝映え〟文化も後押し

 背景にあるのは、やはり「映え」文化である。話題性のある商品はウェイボー(微博)、ウィチャット(微信)、中国版のインスタグラムのレッド(小紅書)、中国版ティックトックのドウイン(抖音)で瞬く間にシェアされ、消費者の購入意欲をかき立てる。結果、コーヒーが遠い存在だった地方都市にも「おしゃれコーヒー」を筆頭としたコーヒー情報が拡散され、Z世代を中心とする若者がコーヒーを手に取り始めた。

 同時にそうした層をターゲットに有名ブランドに加え個人経営のカフェが地方都市にも登場するなど、コーヒーが中国消費者の身近な存在となっていった。大都市では、消費者も成熟のスピードを速めており、同じコーヒーでも豆や焙煎(ばいせん)の種類にこだわるというコーヒー好きも増加。前述のレッドでもドリップ方法などをレクチャーする動画や豆、焙煎の違いに関する情報も見られるようになった。

 コーヒーがしたたり落ちるまでの時間をゆっくりと過ごす、というのが成功者のステータスになっている様子も見て取れる。

 拡大する中国のコーヒー産業、アジアにおけるコーヒー先進国である日本の関連企業もぜひ注目いただきたい。

(中国トレンドエクスプレス編集長・森下智史)



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