22年12月。世界初、高校の部活動に〝靴を作るクラブ〟が発足した。「西成高校靴づくり部」。西成の地場産業である靴・革の歴史や靴作りの技術を高校生に教えている。私が同校に靴づくり部をと発想できたのは、22年4月、鶴見橋商店街の一角に工房を構える「西成製靴塾」の塾長に登用されたことが大きい。
【関連記事】《私のビジネス日記帳》いま与えられた場所で エスペランサ靴学院学院長 大山一哲
西成製靴塾は99年、地場産業の製靴業の再興を目指して作られた靴作りの技術者を育てる工房であり、大阪府立西成高校の生徒たちの通学路に存在している。毎日通学していく姿を見るたびに、「この地域性を生かし、物作りの楽しさを知ってもらえるような、そんな場所が作れないか」と思うようになった。
部室には業務用の本格的な機材を揃え、靴職人に接することができる環境を整えた。部活動を通して、西成を形づくってきた靴作りを体験すれば、地域とつながった仕事の道を開き、靴産業の再興にもつながると確信している。そして、何より生徒たちに知ってほしいことは、先人たちへのリスペクトだ。脈々と守られてきた伝統のおかげで今がある。物作りを通じて、物事の背景を知り、考え、感謝する心を育んでいきたいと願っている。
(エスペランサ靴学院学院長 大山一哲)
◇
「私のビジネス日記帳」はファッションビジネス業界を代表する経営者・著名人に執筆いただいているコラムです。
