1888年9月12日は、モーリス・シュバリエの生まれた日です。フランス出身の俳優、歌手。生粋のパリ人でもありました。少年の頃から舞台に立った根っからのボードビリアンでもあったのです。
晩年の姿は今も映画で見ることができます。たとえば、「昼下がりの情事」。1957年の米国映画。監督はビリー・ワイルダー。主演はオードリー・ヘップバーンとゲイリー・クーパー。シュバリエはパリの私立探偵。その娘のアリアーヌがオードリー。彼女が恋するのが米国の大富豪のフラナガン。演じるのがクーパー。ボーラーハット (山高帽)をかぶる場面があり、つい「ああ、いいなあ」と思ってしまいます。
シュバリエは戦前のパリにカノティエをはやらせた人でもあります。カノティエは英国でのボーターのこと。日本でのカンカン帽。フランスでは男物も女物も「カノティエ」。これは「ボート遊び」のカノタージュ(canotage)と関係があります。シュバリエはいつも舞台の上で愛用。それでカノティエがはやったというわけなのです。(服飾評論家・出石尚三)